政府の「新しい資本主義」実行計画の改定案には、世界的に半導体など戦略物資のサプライチェーン(供給網)の見直しが進む中、日本の地政学的な優位性を生かしながら、海外企業を含めた立地・投資を呼び込む方針を盛り込んだ。米欧なども生産拠点を国内に誘致するため大規模な財政支援を講じる中、日本も「世界に遜色ない水準」で税制・予算面の支援を検討する。
 人工知能(AI)やスーパーコンピューターに使われる先端半導体の世界生産は9割が台湾に集中。「台湾有事」で供給がストップすれば、世界経済は大混乱に陥る。米国を中心に民主主義など価値観を共有する同志国との間での供給網整備を進める中、政治・経済環境が安定して円安で輸出環境も良好な日本は「投資先として魅力が高まりつつある」と指摘する。
 岸田文雄首相は先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)開幕直前の先月18日、海外の大手半導体メーカー幹部を首相官邸に招き、積極投資を呼び掛けた。これを受け、米マイクロン・テクノロジーは、日本で新たに最大5000億円を投資する計画を発表した。
 これまで日本は半導体支援のため計2兆円の予算を確保。これに対し、米国は総額527億ドル(約7兆3000億円)の補助金を用意し、欧州連合(EU)も430億ユーロ(約6兆3000億円)の官民投資を計画する。西村康稔経済産業相は6日の記者会見で「今後、必要な予算をしっかりと確保し、半導体産業の再興・飛躍を加速させる」と強調した。
 実行計画では、データセンターや蓄電池も戦略投資分野に指定。経済安全保障上の観点から中国でのデータセンター立地を回避する動きがあり、日本に優位に働くと期待する。電気自動車(EV)に不可欠な電池の生産は中国メーカーのシェアが高く、国内の生産基盤の強化が急務となる。 
〔写真説明〕新しい資本主義実現会議に臨む岸田文雄首相(中央)=6日午後、首相官邸

(ニュース提供元:時事通信社)