【北京時事】中国で「スパイ行為」の摘発を強化する改正反スパイ法が1日、施行された。改正法は適用範囲を拡大するとともに、摘発機関の権限を強め、国民にも通報を奨励する。統制を強める習近平政権下で、これまで以上に恣意(しい)的な運用が懸念され、在留邦人に不安が広がっている。
 改正法はスパイ行為の定義について、従来の「国家機密の提供」に加え、「国家安全や利益に関わる文書、データ、資料、物品」の窃取や買収を新たに対象とした。「国家安全や利益」に関する具体的な説明はなく、当局の解釈次第で「スパイ行為」と認定されるリスクが高まった。「その他のスパイ活動」というあいまいな項目も、引き続き明記されている。
 同法が定めるスパイ行為に「重要な情報インフラ施設を狙ったサイバー攻撃」も追加され、サイバー空間の取り締まりを厳格化する姿勢が示された。
 摘発に当たる国家安全当局の権限も強化される。スパイの疑いのある個人への手荷物検査のほか、調査段階で関連施設の封鎖が可能となる。物流や通信事業者は調査への協力が求められ、市民向けの通報窓口も設けられた。監視が一層強まるのは確実だ。
 反スパイ法は2014年に制定され、今年4月に初の改正法が成立した。14年以降、日本人の拘束が相次ぎ、これまでに少なくとも17人が確認されている。最近では今年3月に北京でアステラス製薬の日本人男性社員が拘束されたばかり。改正法施行に伴う取り締まりの強化で、企業活動の萎縮や学術・民間交流の停滞など幅広い影響が出ると指摘されている。
 改正法は従来の40条から71条に増えた。報道機関に反スパイ活動の宣伝教育を求めており、今後官製メディアによるキャンペーンが展開されるとみられる。 
〔写真説明〕中国の習近平国家主席=5月19日、陝西省西安(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)