政府は、サイバー攻撃の兆候を捉えて事前に対処する「能動的サイバー防御」の導入に向け、来年の通常国会にも関連法案を提出する方向で検討に入った。今夏以降に有識者会議を設置し、課題を整理する。複数の政府関係者が6日、明らかにした。憲法が保障する「通信の秘密」との整合性が焦点で、政府は電気通信事業法などに例外規定を設けることを検討している。
 能動的サイバー防御は、被害を未然に防ぐため、国のシステムなどが攻撃を受ける前に相手側のサーバーを無力化するなどの対抗措置を取ることだ。政府は昨年末に策定した国家安全保障戦略に「可能な限り未然に攻撃者のサーバーなどへの侵入・無害化ができるよう政府に必要な権限を付与する」と明記。今年1月には内閣官房に担当部局を新設した。
 政府は、サイバー空間を陸海空、宇宙に続く新たな領域と位置付け、中国やロシアが技術開発などを活発化させていることに危機感を募らせている。松野博一官房長官は6日の記者会見で「近年のサイバー空間における厳しい情勢を踏まえれば、サイバー安保分野での対応能力を欧米と同等以上に向上させることは喫緊の課題だ」と強調した。
 有識者会議では憲法学や情報通信分野を中心に学識経験者らを招き、意見を聞く。電気通信事業法や不正アクセス禁止法などの改正を念頭に、どのような状況下で攻撃側の通信情報を取得できるか条件を詰める。
 野党側は通信の秘密との整合性に懸念を示している。サイバー攻撃を未然に防ぐには、兆候を察知した段階で攻撃側を特定しシステムに侵入する必要がある。だが、憲法などで定める、通信そのものを秘密とみなす通信の秘密保護に触れる可能性があるためだ。
 立憲民主党の長妻昭政調会長は6日の記者会見で、サイバー攻撃への対処の必要性には理解を示しつつ、「国の暴走を止めるのが憲法だ。プライバシーや権利の侵害の有無などバランスをみて議論する必要がある」と述べた。 
〔写真説明〕記者会見する松野博一官房長官=6日、首相官邸

(ニュース提供元:時事通信社)