【カフルイ(米ハワイ州マウイ島)時事】米ハワイ州マウイ島を襲った大規模な山火事から15日で1週間。過去100年に米国で起きた山火事では最悪となる99人の死亡が確認され、連日その数は増えている。被害が集中した島西部の歴史ある町ラハイナは「まるで戦場」の様相。住民は肩を落とすとともに、長期化する避難生活で疲労の色を濃くしている。
 「父から受け継いだ家が全焼した。ラハイナはまるで戦場だった」。ラハイナの約20キロ東に位置するカフルイの教会「キングズ・カテドラル・マウイ」に避難したジェイミー・フェルナンデスさん(68)は被災時の様子を振り返った。ハワイ王国時代に一時首都が置かれた町は、変わり果てた姿になった。
 山火事は8日に発生した。フェルナンデスさんは丘から立ち上る煙が、強風にあおられ一気に距離を詰めて来るのを見て、「これは大変なことだ」と直感し避難を始めた。妻と息子2人らも無事だったが、「黒煙に巻き込まれたり、海に飛び込んだりして亡くなった人がいる。ただただ悲しいよ」と嘆いた。
 教会には300人程度が避難していた時もあったが、協力先のホテルに移り始めている。教会の牧師で、避難所を指揮するシャノン・マロッコさん(41)は「仮設住宅を建てようとしている」と説明。州も、ホテルや民泊などの一時的な住まいの融通を拡大する方針だ。
 今回の火災では、推定60億ドル(約8700億円)の損害が生じた。フェルナンデスさんは「がれきを片付けようにも、アスベストも含まれている。時間がかかるだろう」と疲れ切った表情で話した。
 まだ、行方不明者の捜索が続いており、ハワイ州のグリーン知事は、CBSテレビに「これから1日に10~20人(の遺体)が見つかる」と述べた。在ホノルル日本総領事館によると、邦人の被害情報は入っていない。 
〔写真説明〕14日、ハワイ州マウイ島カフルイで、取材に応じる被災者のジェイミー・フェルナンデスさん
〔写真説明〕14日、米ハワイ州マウイ島西部ナピリ・ホノコワイで、山火事の被災者のための支援物資を運ぶボランティアら(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)