【バンコク時事】タイ政府観光庁(TAT)のトップが、国内の観光地で同国と中国の警察が「合同でパトロールする予定だ」と発言し、波紋を広げている。治安に対する中国人観光客の信頼を高めるのが目的とされるが、タイ警察トップは主権侵害を理由に否定。セター首相も「指示していない」と火消しに躍起になっている。
 TATのタパニー総裁は12日、報道陣に対し、タイ国内の主要観光地でタイと中国の警官が一緒にパトロールする計画を進めており、在タイ中国大使館とも協議中だと述べた。10月のセター首相の訪中後に議論されたもので、イタリアなどでも一時期、同様の事例があったとも指摘した。
 この発言に対し、タイのトーサック警察庁長官は13日、「タイの主権侵害に当たり、反対だ。観光客の安全はタイ警察が守る」と強調。中国警察との間では情報交換するにとどまると説明した。
 セター氏は15日、訪問先の米サンフランシスコで「タパニー総裁の発言には間違いがあった」と断言。「合同パトロールについては指示していない。意思疎通に問題があった」と語った。
 首都バンコクでは10月、大型商業施設で銃乱射事件が発生し、中国人観光客ら3人が死亡。タイ政府は観光産業への悪影響を避けるため、安全対策を強化している。 
〔写真説明〕取材に応じるタイのトーサック警察庁長官(中央)=13日、バンコク(タイ警察提供・時事)

(ニュース提供元:時事通信社)