羽田空港で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突炎上した事故は2日で発生から1カ月となった。国土交通省は管制官が「ナンバーワン」などと出発の順番を航空機に伝える運用を当面見合わせるなど緊急対策を打ち出したが、現役パイロットからは「有益な情報」という意見も上がる。有識者会議も今夏までに中間取りまとめを公表する予定で、再発防止に向けた同省の模索が続く。
 事故発生後、国交省はヒューマンエラー対策の専門家を座長に据えた外部有識者らによる対策検討委員会を設置。パイロットと管制官への注意喚起システムの強化や交信に用いる管制用語の見直しなどを主な論点に議論を進める予定だ。
 現場の意見をヒアリングするため、管制官とパイロット計40人による緊急会合も羽田空港で開催した。同省は「ナンバーワン」といった言葉が滑走路への誤進入を招きかねないとしていたが、パイロット側からは「航空機の出発順の情報は役立つ」と意見が出たという。
 元日航機長で航空評論家の杉江弘さんによると、「離陸」「滑走路への進入」などの管制指示には国際標準が設けられており、パイロットの復唱も求められている。一方、「ナンバーワン」といった情報提供は、管制官のサービスとして慣習的に用いてきたといい、世界的な使用は少ないとされる。
 杉江さんは管制官の言葉で誤認を生じさせないために、「どの用語が離陸や滑走路への進入などを指示する言葉なのか、管制用語の使い分けについても官民問わず教育訓練をいま一度徹底すべきだ」と求めた。
 また羽田のような過密空港で管制官の人員が不足している問題や、日航機が今回、ゴーアラウンド(着陸やり直し)できなかった原因追究の必要性も指摘し、「国交省には幅広い議論で対策を講じてほしい」と要望した。
 事故は1月2日午後5時47分ごろ、羽田空港C滑走路上で発生。日航機の乗客乗員379人全員が脱出し、海保機は乗員5人が死亡、機長は重傷を負った。運輸安全委員会が原因究明に向け調査し、警視庁は業務上過失致死傷容疑で捜査している。 
〔写真説明〕海上保安庁の航空機と衝突、炎上した日本航空機=1月4日、東京・羽田空港
〔写真説明〕羽田空港で炎上する日本航空機への消火活動=1月2日、東京都大田区

(ニュース提供元:時事通信社)