【シリコンバレー時事】生成AI(人工知能)を巡る著作権訴訟が相次いでいる。作家や芸術家の作品のほか、報道機関の記事を無断でAIに学習させたとの訴えが多数を占める。生成AIは、文章や画像を容易に作成し活用できる道を開いた一方、人間が心血を注いで作った著作物の適正な対価の在り方が問われている。
 「ジャーナリズムへの巨額投資にただ乗りしている」。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は昨年12月、「チャットGPT」を開発した米オープンAIと、同社の技術を使うマイクロソフトを提訴した。数十億ドル(数千億円)の損害を被ったと主張している。
 オープンAIだけではない。画像生成AIの「ステーブル・ディフュージョン」や「ミッドジャーニー」の開発企業は芸術家から訴えられた。米グーグルなどが出資する「アンソロピック」は、ユニバーサルミュージックグループなどから歌詞の利用について訴えられた。
 生成AIは、基盤モデルに小説や論文、プログラミングコード、動画、静止画などを学習させることで、人間の指示を理解し回答を示せるようになる。開発各社は、インターネット上のデータを収集することで、回答の性能を高めてきた。ただ、その引用元の許諾を得ないまま使うケースが問題になっている。
 オープンAIは、NYTの訴訟への反論をブログに掲載。ネット上の情報を学習させることは「フェアユース(公正利用)」だと主張した。裁判所が、どこまでを公正利用の範囲と判断するか注目される。
 一方、同社は欧州で新聞社などと相次いで提携した。記事を学習に使うことや、回答で記事要約を示すといった協力関係の構築が目的だ。生成AIの活用でメディア側が顧客基盤を広げられる可能性もあり、共存の方法も模索されている。 

(ニュース提供元:時事通信社)