【台北時事】台湾で3日に発生した大規模地震を受け、最先端技術に欠かせない半導体で世界をけん引する台湾積体電路製造(TSMC)への影響が国際的な関心を集めている。経済安全保障の観点からサプライチェーン(供給網)が台湾に集中していることのリスクを指摘する声も前々から上がっており、TSMCと台湾政府は懸念払拭に腐心している。
 TSMCは3日夜、一部の工場では少数の設備が被災し稼働に支障が出たことを明らかにした上で、「7割以上が復旧した」と説明。先端半導体の製造に不可欠な極端紫外線(EUV)露光装置は損傷していないとし、「地震への対応と防災に十分な経験と能力を有している」と完全復旧に自信を示した。
 これに対し、海外メディアからは厳しい指摘が相次いだ。米CNN(電子版)は「地震が発生しやすく、地政学的緊張のホットスポットでもある島に、重要なマイクロチップ製造を集中させることのリスクをはっきりと思い出させた」と指摘。英BBCも「半導体のサプライチェーンは台湾に集中しており、世界経済に影響を与える可能性がある」と報じた。
 TSMCの半導体受託生産は世界シェアの6割を占め、生産能力の9割以上を台湾内に置いてきた。中国の脅威が増す中、経済安全保障を強化するため日米欧などの各国はTSMCの誘致拡大を目指し、台湾政府にも協力を促している。
 台湾政府関係者は、台湾への「一極集中」を疎む海外の見方に「各国が欲しがる半導体があるからこそ、各国と正式な外交関係がなく小さな台湾が国際社会で存在感を示し、中国からの統一圧力に対峙(たいじ)できている」と複雑な心境を吐露した。 
〔写真説明〕台湾積体電路製造(TSMC)の工場=2022年12月、台湾南部・台南(ロイター時事)

(ニュース提供元:時事通信社)