官民ファンド産業革新投資機構(JIC)によるJSRのTOB(株式公開買い付け)が成立した。今後はJICの支援を受けたJSRが、半導体材料分野での事業再編を主導し、海外勢と競争できる「日の丸連合」を実現できるかが焦点だ。
 半導体は幅広い電子機器に使われる。生成AI(人工知能)の普及をはじめデジタル社会にも欠かせない。日本は半導体そのものでは海外に後れを取るものの、経済産業省によると、主要な半導体材料分野では世界シェアの半分程度を占める。
 とりわけ半導体製造に必要な化学薬品フォトレジスト(感光材)はその代表格。フォトレジストは基板に塗られ、微細な回路を作り出すのに不可欠だ。市場シェアは3割のJSRを筆頭に、日本企業5社で9割を占める。
 現状は国内企業が世界市場で圧倒するが、先行きは予断を許さない。日本ではメーカーが個別に開発しているのに対し、独化学大手BASF、メルクなど海外勢はM&A(合併・買収)などを進めて技術力と資金力を強化している。
 危機感を強めたJSRは2022年、国内勢との業界再編を通じて技術融合を進めようと、JICに協議を打診。今回のTOBにこぎ着けた。JSRのエリック・ジョンソン社長は昨年11月の決算説明会で、「業界で話し合いが加速している」と、同社主導の再編に自信を示した。
 ただ、政府が関与した半導体や中小型液晶パネルなどでの「日の丸連合」は苦戦が目立つ。業界関係者からは「まとめれば強くなるかというとそうでもない。急速な再編機運はない」と冷めた声も出ている。 

(ニュース提供元:時事通信社)