【シドニー時事】南太平洋のフランス領ニューカレドニアで続く暴動が、ニッケル市場に暗い影を落としている。世界3位の産地からの供給が停滞し、相場は急騰。もともと激しい国際競争にさらされていたニューカレドニアは、暴動に伴う混乱で一層苦境に追い込まれそうだ。
 ニューカレドニアは、インドネシア、フィリピンに次ぐニッケルの産地で、埋蔵量は世界の25%程度に上る。ニッケルはステンレス鋼の材料となるほか、電気自動車(EV)のリチウムイオン電池などに使用されており、脱炭素化の進展で需要増が見込まれている。島内には米EV大手テスラが出資した鉱山もある。
 ニューカレドニアでは、仏系移民への地方参政権拡大の動きに先住民らが反発し、暴動が13日以降続いている。ニッケルのベルトコンベヤーが火災に遭ったり、主要道路や港湾が封鎖されたりして供給が滞った。ロンドン金属取引所のニッケル相場は21日、1トン当たり2万1275ドル(約334万円)を付け、暴動前の今月上旬から約15%上昇した。
 離島のニューカレドニアは燃料や輸送の費用がかさむ上、最大生産国インドネシアの勢いに押され、暴動前から競争力の低下に悩んでいた。暴動を受けて顧客が調達先を他の産地に変える動きが進めば、輸出産業の主力が衰退しかねない。仏政府は早期の暴動制圧と経済の正常化を目指す。ニッケル産業への支援も強化する考えだ。
 モナシュ大学(オーストラリア)のニコラス・ファーンズ研究員は「フランスがニューカレドニアの支配を続けたいと望む動機の一つがニッケルだ」と指摘。太平洋島しょ地域で中国が影響力拡大を図っていることに絡み、「先住民らが仏統治下の経済的不平等を解消する手段として中国への接近を考えるかもしれない」との見方を示した。(了)

(ニュース提供元:時事通信社 

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