2024/05/25
防災・危機管理ニュース
【シドニー時事】南太平洋のフランス領ニューカレドニアで続く暴動が、ニッケル市場に暗い影を落としている。世界3位の産地からの供給が停滞し、相場は急騰。もともと激しい国際競争にさらされていたニューカレドニアは、暴動に伴う混乱で一層苦境に追い込まれそうだ。
ニューカレドニアは、インドネシア、フィリピンに次ぐニッケルの産地で、埋蔵量は世界の25%程度に上る。ニッケルはステンレス鋼の材料となるほか、電気自動車(EV)のリチウムイオン電池などに使用されており、脱炭素化の進展で需要増が見込まれている。島内には米EV大手テスラが出資した鉱山もある。
ニューカレドニアでは、仏系移民への地方参政権拡大の動きに先住民らが反発し、暴動が13日以降続いている。ニッケルのベルトコンベヤーが火災に遭ったり、主要道路や港湾が封鎖されたりして供給が滞った。ロンドン金属取引所のニッケル相場は21日、1トン当たり2万1275ドル(約334万円)を付け、暴動前の今月上旬から約15%上昇した。
離島のニューカレドニアは燃料や輸送の費用がかさむ上、最大生産国インドネシアの勢いに押され、暴動前から競争力の低下に悩んでいた。暴動を受けて顧客が調達先を他の産地に変える動きが進めば、輸出産業の主力が衰退しかねない。仏政府は早期の暴動制圧と経済の正常化を目指す。ニッケル産業への支援も強化する考えだ。
モナシュ大学(オーストラリア)のニコラス・ファーンズ研究員は「フランスがニューカレドニアの支配を続けたいと望む動機の一つがニッケルだ」と指摘。太平洋島しょ地域で中国が影響力拡大を図っていることに絡み、「先住民らが仏統治下の経済的不平等を解消する手段として中国への接近を考えるかもしれない」との見方を示した。(了)
(ニュース提供元:時事通信社 )
(ニュース提供元:時事通信社)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方