2025/03/25
防災・危機管理ニュース
【イスタンブール時事】トルコでエルドアン大統領の「最大の政敵」で、最大都市イスタンブールのイマモール市長の拘束を機に、政治の混乱が長期化する様相を見せている。26日で拘束から1週間となる中、支持者らは連日の抗議デモで治安当局と衝突。エルドアン氏は「街頭テロ」と対決姿勢を示しており、強権体質に拍車が掛かる可能性もある。
イスタンブールの市庁舎前では、汚職容疑でイマモール氏が身柄を拘束された19日以降、市民が多数参集。拘束に対して「政治的迫害」「民主主義の後退」と批判を強めている。イェルリカヤ内相によれば、19~25日の間にデモ隊1410人超が拘束された。
イスタンブール市長として2期目のイマモール氏は世俗的な人が多く暮らす都市部で特に人気が高い。23日には、世俗派の最大野党・共和人民党(CHP)の予備選で、2028年に予定される大統領選候補に選ばれた。ただ、拘束前日に、立候補に必要な大学卒業資格を母校のイスタンブール大から剥奪され、出馬が認められない恐れが出ている。
トルコではエルドアン氏率いるイスラム系与党・公正発展党(AKP)の20年以上の長期政権が続く。国是である世俗主義を維持しながらも、エルドアン氏はイスラム色の濃い政策を推進。憲法改正で大統領の権限を拡大し、自らに権力を集中させた。国際社会でトルコの存在感を高める一方、専横的な政治手法は世俗派などから反発を招いている。
エルドアン氏は17年に改正された憲法下で現在2期目。憲法の規定で3選出馬は禁止されているが、2期目中に議会が前倒し選挙を決めれば立候補が認められる。事実上の信任投票となった24年の統一地方選では、AKPがCHPに敗北。強権化や物価高騰への不満からエルドアン氏の求心力には陰りも見え、野党は早期選挙を訴えている。
英紙フィナンシャル・タイムズは、イマモール氏の突然の拘束について「強力な証拠が示されない限り、大統領がさらに権威主義的な道を歩んでいくとの危惧を強めさせる」と指摘した。政治の混迷で通貨や株価が急落し、経済に悪影響が出始めている。
〔写真説明〕トルコ最大都市イスタンブールのイマモール市長=1月31日、イスタンブール(EPA時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

- keyword
- トルコ
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方