2026/03/11
危機管理の伴走者たち
余計な情報をつながない安否確認システム
トップインタビュー
パスカル代表取締役社長 井上隆氏
Profile
【いのうえ・たかし】
1958年生まれ、長野県出身。工業系専門学校で電気工学を学び、卒業後に地元のコンピューター会社に就職。25歳で独立し、1984年パスカルを設立。システム開発会社として培った経験を生かし、さまざまな顧客にデジタルを使ったコミュニケーションサービスを提供している。
ITシステムの開発・販売を手がけるパスカル(長野県佐久市)の代表的サービスといえば、安否確認システム「オクレンジャー」だ。2006年に提供を開始したサービスは災害時の初動に欠かせないアプリとして広く認知され、累計ユーザー数260万を突破した。同社は地域のSIer(エスアイヤー)として、防災以外にも多くの分野でビジネスの高度化と価値創出に貢献。社長の井上隆氏に、創業以来の事業コンセプトと今後の展望を聞いた。
※本記事は「月刊BCPリーダーズvol.71(2026年2月号)」に掲載されたものです。
――ITシステムの開発・設計・運用を行うSIer(エスアイヤー)として今年で43年目。事業スタート時はどのような市場環境だったのですか?
創業期の1980年代は、大型コンピューターからパソコンネットワークの時代へ、まさに変わろうというときでした。当時の主軸は大手ITメーカーからの委託によるシステム開発。つまり下請けです。大型汎用機はプログラミング言語が限られ、大きなトラブルも起きにくかったので、結構利益が出たのです。
しかし、コンピューターが小型化してネットワークが絡んでくると、ソフトウェアが複雑化し、細かなプログラミングが必要になる。画面もビジュアルになり、デザイン要素が入ってきます。発注元との打ち合わせが増え、経費が過多になっていきました。
そこで、もう一つの軸として、地元を中心に企業のシステム開発を直接請け負う形態を増やしていった。当時は、納入したシステムはソフトを含めSIerが無償で面倒をみるのが当たり前でしたが、当社は1年後から保守契約してお金をいただく仕組みをつくりました。いま行っているサブスクリプションビジネスの原形です。
――ビジネスモデルの基盤を徐々につくり上げていった、と。
自社開発したシステムをパッケージで納入し、その後の保守まで行うことで固定客を増やしていきました。が、固定収入は得られるものの、このビジネスモデルを維持していくにはコストがかかる。サブスクのメリットをより生かせるサービス開発の必要が出てきました。
ちょうどパソコンが普及し始め、あちこちでホームページが立ち上がってきた頃。いちいち検索するのは面倒ですから「必要な情報が必要なところへ自動で届くソフトがあれば便利だ」と考えました。が、まさに技術は日進月歩で、すぐにウェブサイトの新着情報を自動配信するRSS 機能が出てきた。ウインドウズのOSに組み込まれ、あっという間にソフトの必要性がなくなってしまいました。
ならば携帯電話、いまでいうガラケーにソフトを搭載したらどうかということで、開発に乗り出したのですが、数多の機種に対応するのは費用がかかり過ぎる。行き詰まっていたところ、今度はスマートフォンが出てきました。スマホはiOSとAndroidの二つのOSに対応すればいいですから、これはいけるとなったわけです。
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