2025/04/29
防災・危機管理ニュース
事業者などに障害者への「合理的配慮の提供」を義務付けた改正障害者差別解消法の施行から4月で1年が経過した。ただ、民間会社の調査で義務化を「知らない」と答えた障害者が6割に上るなど、認知度の向上が課題となっている。専門家は「国や自治体の支援体制が重要だ」と訴える。
合理的配慮は、障害者が設備やサービスを利用する際、申し出を受けた事業者などが過重な負担にならない範囲で対応することだ。スーパーの店員が視覚障害者を商品売り場まで案内するケースなどが想定され、双方の「建設的対話」が重要となる。合理的配慮の前段階として、施設のバリアフリー化といった事前の「環境整備」も欠かせない。
障害者向けのアプリを提供するコンサルティング会社「ミライロ」などは昨年7月、アプリを利用する障害者らを対象にオンラインでアンケート調査を実施。回答した1007人のうち、改正法施行による合理的配慮の義務化について知っていたのは36.4%で、残りは「知らない」と答えた。
同社経営企画部の梶尾武志部長は「障害者が知らない以上、『建設的対話』は生まれにくい。国はもっと周知するべきだ」と語る。国は改正法成立以降、事業者向けのオンライン説明会や障害者団体への呼び掛けを行ってきたが、内閣府の担当者は「まだ理解が深まっていないこともあり、継続して周知したい」と話す。
静岡県立大の石川准名誉教授(社会学・障害学)は「障害者団体を通じて理解は一定程度広がっているが、団体に所属しない人もいる。行政から情報提供しなければ理解が進まない」と指摘。一方、「個別のケースに対応する合理的配慮は万能ではない。『環境整備』と両輪で進めるのが重要だ」と話している。
(ニュース提供元:時事通信社)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/01
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
-
-
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方