企業活動は価値創造を目指した将来への働きかけといえる。価値創造の過程で遭遇する不確実性は、企業価値に変動を及ぼし、事業計画で想定したシナリオどおりの達成を阻害する。企業による社会課題のビジネス化の取り組みにおいては、財務要素に起因する阻害要素だけではなく非財務要素に起因する影響も受けることとなる。
これまで企業は、リスク管理の対象を主に財務要素に起因する経済的価値の変動に置いてきた。しかし、社会課題のビジネス化はソーシャルビジネスと呼ばれるように、社会課題をビジネスの手法を用いて解決することを目標としている。社会課題を解決するために今欠けているものを確認し、それを解決するのに効果のある商品・サービスを明確にし、自社の事業の強みや特徴を活かして事業化してゆく。このようなソーシャルビジネスに取り組む企業の多くは、サステナビリティ関連のスタートアップ事業を育成し、グループ内のシナジーも活用して、将来の非連続な成長へとつなげようと、内部留保資本(Corporate Venture Capital: CVC)を使って推進するのが一般的である。このような取り組みの中から、有望な事業が見出せれば積極的な資金投入を実施し、見込みが少ない事業からは撤退するといった判断を繰り返す形で、持続的成長の流れを作ってゆく戦略といえる。
しかしながら、企業内の余資の範囲内での事業展開には制約もある。ダイナミックな事業展開にはファイナンスを必要とし、この展開に至るまでには事業としての一定の確信が必要となる。企業が持続的成長を目指し、現時点とは非連続となる成長を導くために事業ポートフォリオの改革を進めてゆくためには、この種の経験知を積み上げてゆくことが期待される。
社会課題のビジネス化の過程で発生する諸リスクは「ソーシャルリスク」と呼ぶことができよう。これらのリスクは財務要素だけではなく非財務要素によって引き起こされることが多く伝統的なリスク管理とは異なる。財務要素のように市場メカニズムに影響を受ける構造にはなく、社会の価値観やパラダイムの変化がリスクに影響を及ぼすこととなる。このように時代の経過に伴う社会構造の変化、社会的価値、背景、文脈の変化との関係でリスク自体の動態性に着目しなければならない。さらに、企業が社会課題のビジネス化に取り組むことにより、企業の活動自体がソーシャルリスクに影響を与えてゆくといった新たな関係性をも生むことになる。企業の社会的責任にも関心が払われることとなろう。
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