漫画家の不祥事に関連して問題が広がった(写真:Adobe stock)

不祥事が起きた時、その対応の良し悪しで、その後の影響が大きく異なることがあります。危機管理広報では、どのような対応が望ましいのか、常に事例を蒐集し、検討していくことが必要です。今回は、2026年2月に起きた、小学館「マンガワン」(https://manga-one.com/)を巡る騒動を見てみましょう。

相次いだ性加害の軽視

2026年2月20日、札幌地裁にて、教え子の女子高校生(当時15歳)に対して3年間にわたり性虐待を繰り返した元講師の男性に対し、約1100万円の損害賠償を命じる判決が出されました。

この講師が、不祥事で連載が中止になった漫画家「山本章一」であるという投稿がXで拡散され、ニュースサイトやマスメディアが相次いで後追いしました。

その結果、かなり深刻な事態が明らかになってきました。

連載終了から2ヶ月後、マンガワン編集部は、「一路一(いちろいち)」という別のペンネームで、新連載『常人仮面』の原作者として再起用していました。この事実は、作画担当者に伏せられていました。

また、マンガワンの担当編集者が、加害者と被害女性の間の和解協議にも関与していました。編集者は被害者に対し、性被害について「口外禁止」とすることや、「連載の中止要求を撤回する」ことを盛り込んだ公正証書の作成を提案したとされています。組織が被害者の口を封じようとした疑いが持たれ、激しい批判を浴びました。

続いて、社内調査の結果、2026年3月2日、別の事案も公表されました。

マンガワンで連載されていた『星霜の心理士』の原作者の正体が、2020年に強制わいせつ罪で逮捕・有罪判決を受けた『アクタージュ act-age』の原作者、マツキタツヤだったというものです。ただし、こちらは編集部が執行猶予の満了を確認した上で、ペンネームを変え、作画担当者も了承した上で起用したものでした。

こちらは、通りすがりの女子中学生の胸を触ることを繰り返したというもの。いずれにせよ、性加害の軽視、被害者の人権への軽視、内部統制の不足が疑われる事案です。

加害者、被害者ともに控訴して、係争が続いている(写真:Adobe stock)

特に、山本章一の事件は、事件そのものもかなり悪質な上、双方控訴したので、係争中という状態です。法的に罪を償い、賠償も行った後ならとにかく、ペンネームを密かに変えて、作品を発表するというのは、いくらなんでもおかしな話です。

また、明らかになれば連載中止となるのがわかりきっているのに、作画担当者に告知していなかったというのも、酷い話です。

その結果、複数の連載作家が編集部への「不信感」を表明し、マンガワンでの配信を停止する事態となりました。旧作でも、高橋留美子先生の「めぞん一刻」「らんま1/2」なども掲載終了となっています。

言うまでもなく、小学館の漫画部門にとって、漫画家は最大のステークホルダーです。また、京都精華大学マンガ学部が小学館との連携事業を停止すると発表しています。

騒動が拡大するにつれ、小学館は事態を重く見て、弁護士らによる第三者委員会の設置を発表し、編集部の管理体制や人権意識の検証を開始しました。

その後、3月8日、被害者が小学館取締役からの謝罪を受け入れ、「特に、漫画家さんの作品を小学館から引き揚げて欲しいとも思っていないし、多くの漫画家さんの活躍の場であるマンガワンをなくして貰いたいとも思っていない」というコメントを発表したことから、その後は連載再開も徐々に行われているようです。

札幌地裁判決について(東京共同法律事務所)

https://www.tokyokyodo-law.com/%e6%9c%ad%e5%b9%8c%e5%9c%b0%e8%a3%81%e5%88%a4%e6%b1%ba%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6/