2014/01/25
セミナー・イベント
2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けたBCPと危機管理

BSIグループジャパン株式会社営業本部部長
鎌苅隆志氏
2020年に東京オリンピックが開催されることが決まりました。大会コンセプト、またアピールポイントとして、「コンパクトな五輪」、「安心・安全・確実な五輪」が掲げられています。企業にとっては大きなビジネスチャンスが期待される一方で、利益を最大化させるために日常的な事故や不祥事への対応はもとより、環境負荷への配慮や、関連機関との連携など、さまざまな対策が求められます。
国際イベントの開催方針は、ここ数十年で大きく変化しています。1964年の東京オリンピックの際は、集客数はもちろんのこと、日本の経済力を世界にアピールしようという意図が込められていました。あるいは大会開催に伴う技術革新、サービスの発展、こうしたことがテーマとなっていました。2005年開催の愛・地球博では、環境にやさしい、地球にやさしいことを考慮すべきだということが日本国内でも注目されることになりました。
大きな転換期となったのは、2012年のロンドンオリンピック。これまでの環境に加え、経済効果や社会的な影響の側面を踏まえ、持続可能なイベントを実施する方針となり、そのマネジメントシステムとしてISO20121(持続可能なイベント運営のためのマネジメントシステム)が誕生し、採用されました。2020年の東京オリンピックもISO20121の認証に沿って運営することが既に発表されていて、オリンピック関連の事業を展開する上では、このコンセプトを念頭においた活動が必要となります。
また、オリンピック開催後も持続する社会的影響であるこれらの効果は、レガシーという言葉で呼ばれています。オリンピックレガシーを最大化させることで、オリンピックによる間接的効果を成長戦略と結び付け、起爆剤とすることが2020年東京大会の最大の目的と言えます。
直接的な経済効果は3兆円と言われていますが、間接的な経済効果はどの程度に上るのでしょうか。それ自体を試算することは難しいですが、まず第一に観光需要の増加が挙げられます。次に各地のインフラ整備の加速、技術革新に伴う設備投資などが挙げられると思います。世界中から非常に注目を集める期間ですので、企業にとっては非常に効果的なマーケティングの機会でもあります。また、その後の各種大型イベントの開催を誘致するきっかけになる可能性も大きいと思います。これらの効果を最大限に活用したいということです。
では、経済効果や社会的影響という付加価値を持続させるために、企業はどう備えるべきでしょうか。そのためには、まずは想定されるリスクを特定する必要があります。リスクを特定し、受ける被害を最小限に留めることで、確実にチャンスを獲得するためです。つまり、どういった種類のリスクがあるのか理解しておく必要があります。それらを踏まえて、東京大会に備えたBCPを作成しておくことが理想です。
通常、ISO22301などでマネジメントを行う際には、リスクの特定からは行わず優先業務の特定から行いますが、東京オリンピックの場合はリスクを特定することがある程度可能なので、まずリスクの特定から始めます。その後、重要活動の特定、依存度分析、BCP戦略の策定、BCP策定と、ISO22301とは少し違った流れになります。
では、どういったリスクが予想できるのかというと、交通、物流、通信、テロ・災害、セキュリティ、エネルギー、東京への集中が一部ですが挙げられるかと思います。道路の渋滞によって、通常2時間で運べるものが半日かかるかもしれません。海外からの旅行者が一気に増えることで、公安、あるいは空港で通常通りに物流が流れなくなる可能性があります。次に通信ですが、一斉に膨大なデータが日本から世界に向けて配信されるのでリスクがあります。一番暑い時期に開催されるため、エネルギーについても心配です。また、開催前、期間中、開催後の3つのフェーズでリスクを特定するのも重要となります。 現段階においてはこれらリスクを特定する作業が一番重要な作業かもしれません。
セミナー・イベントの他の記事
おすすめ記事
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/19
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方