2014/01/25
セミナー・イベント
非日常を日常でマネジメントする

一般財団法人日本品質保証機構マネジメントシステム部門審査事業センター
情報セキュリティ審査部参与
中村春雄氏
日本人は古来より行事を通じて災害に備えてきました。例えば年末には大掃除をして家の中を整理し、建物の状態を見ます。お彼岸には、通常高いところにあるお墓に参り、避難ルートを自然と確認していました。このように有事へ向けた対策は、企業が日常の活動の中で行えるのが望ましいわけです。
多様化するリスクに対応するため、品質のISO9001、環境のISO14001、情報セキュリティのISO27001、そして事業継続のISO22301など、様々なマネジメントシステムがあります。これらマネジメントシステムの特長を一言で表すと、それぞれに明確な目的があるということです。ISO9001は、品質維持と顧客満足のためのものです。ISO22301は事業継続とレジリエンシー、日本語で「しなやかな回復力」のためのものであり、これらの目的のために結集された知恵が規格なのです。
また、各マネジメントシステムにはトレードオフがあり、例えば環境配慮のために裏紙の使用を徹底すると、情報漏えいの危険が高まりますし、情報セキュリティを高めれば従業員の安否確認の際、個人の情報を得にくいといったことが生じます。在庫を例にすると顧客満足と事業継続のためには多く抱えることが有効ですが、環境負荷はそれに伴い高まります。こうした問題に対して、マネジメントシステム規格間の整合を図り、経営者自身がマネジメントできるように、HLS (High Level Structure)という共通の規格の書き方がISO22301で初めて採用されました。HLSは既にISO27001にも採用され、今後はISO9001やISO14001にも採用される見込みです。
HLSの採用で、災害時のマネジメントシステムを、品質、環境、情報セキュリティ等の日常で実施しているマネジメントと一体化して導入・管理することが可能となり、BCPを真に有効なものとすることができるでしょう。では日常のマネジメントシステムを使って非日常をマネジメントするとは具体的にどういうことでしょうか。
企業は、製品やサービスを提供するために、様々な活動を行っています。そうした各活動に事業継続のためのステップを加えることで、日常的な業務がそのまま非日常の状況に対応していることが望ましいといえます。そのためには、まず企業が事業を継続する上で必要な活動と、各活動について最低限必要な資源を割りだします。さらにリスクアセスメントを行い、守るべき事業とリスクを明確化します。
例えば人という資源に関しては、どの企業でも作成している組織図に交替要員を加えたり、社員の誰が何をできるかというスキル表に、消火器が使える、救急処置が行えるといった災害対応のスキルを盛り込むことが挙げられます。設備と機器に関しては固定資産台帳や、情報セキュリティに取り組む多くの企業が作成する情報資産目録に、予備や相互関連の情報も盛り込めばいいのです。これにより日常的な活動が非日常で有効に機能することになるでしょう。さらに重要な活動に見合ったリソースの使用状況や、社会インフラといった自組織以外のリソースへの考慮など、非日常の活動が日常の活動に気づきを与えることにもつながるでしょう。
ISO22301では、リスク管理におけるBCPの災害時の活動を日常活動に取り込むよう定めています。ISO22301が有効でありながら国内では認証件数がそれほど増えていないのは、BCPの浸透率から考えると意外です。BCPを策定したものの、かかる費用や手間に躊躇しBCMS構築まで踏み込めない企業が多いように思います。
BCPを効果的に運用していくためには、ISO22301を活用し、BCPを最新の状況に合わせて更新し、運用・維持することが必要です。これにより本当に災害に強いマネジメントシステムを実現できるでしょう。めったに起きないことに日常的に備えることが、事業を継続するために何が重要かを気づかせ、それを強化することで組織が強く、やさしく、付加価値を高められるのです。
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