2025/05/02
インタビュー
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める
座学だけでなく実体験を重視する

コンサルティング事業本部
組織人事ビジネスユニット
HR第4部マネージャー
国家資格キャリアコンサルタント、認定ワークショップデザイナー・マスター。
教育体系構築や階層別研修、組織開発、女性活躍などのプロジェクトに従事し、従業員がイキイキと働ける組織づくりを支援している。
ーー企業の人材育成では、どのような教育方法がとられているのでしょうか。
管理職やリーダーを対象とした人材育成では、座学中心の学びだけでは現場で活用できる力が備わらないという課題があります。また研修で学んでも日常業務に戻ると目の前の仕事に追われ、せっかく学んだことを忘れてしまいがちです。そうした状況を踏まえ、最近では座学だけではなく、実体験からの学びを重視した教育スタイルがスタンダードになっています。
具体的には実践と振り返りを通して教訓を引き出し、次に生かす。「経験学習サイクル」と呼ばれる方法です。体験の重要性は「70:20:10の法則」としても有名です。これは、人が成長するための学びの構成比率を示したもので、70%は「業務上の経験」、20%は「他者との交流やフィードバック」、10%が「座学や研修」からというものです。つまり、実践からが、最も多くの学びを得られるのです。
アクションプランを立てる

ーー「経験学習サイクル」を活かした教育方法について、教えてください。
具体的な取り組み例としては、まず座学の集合研修で必要な知識をインプットし、その後、自身の業務に直結した「アクションプラン」を立てます。例えば、「自部署の残業を減らす」「●●トラブルの減少」など、現場で実際に取り組むことができるテーマを設定して、実施計画を作ります。次に、その計画に従い3カ月や半年のように一定期間、試行錯誤しながら実際に取り組んでもらいます。
そして、再び集まって成果発表会などの形で、自らの取り組みを発表して振り返り、他の参加者と共有します。このプロセスを経ることで、単なる学びで終わらず、行動につながる経験を得ることができます。
ーー成果発表会まで視野に入れると、研修担当者と参加者の負担は大きそうです。
組織的に負担がかかることは事実です。参加者はアクションプランや発表資料の作成、研修担当者は成果発表会の準備や運営など、通常業務との両立が求められるため、ためらう企業も少なくありません。しかし、座学を中心とした研修のみやアクションプラン作成までといった中途半端に実施するよりは、明らかに効果的です。
また、成果発表会は、組織内で成功事例を共有する機会にもなります。他者の取り組みから新たな気づきを得たり、同じような悩みを抱えている人から解決するためのヒントをもらったりと、組織的にプラスの効果が期待できます。発表会に上司や経営層が参加できれば、取り組みへの動機づけにもつながります。
このように一度、業務上の課題を見える化して解決に導けると、次のテーマへの着手もスピーディです。学ぶだけではなく行動する。いかに行動させ経験を積むかが重要になります。
インタビューの他の記事
- 「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
- 事業継続は戦略部門化しているインタビュー:コントロール・リスクス北米・中南米地域 CEOビル・ユーデル氏
- 気候変動適応がBCPにもたらすロングスパンの経営観
- 「まさかうちが狙われるとは」経営者の本音に向き合う
- 企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方