2019/10/08
ロックフェラー財団100RCに見る街づくりのポイント
アテネのレジリエント戦略
これらの課題を克服するため、アテネのレジリエント戦略では次の4つの柱を掲げました。
【レジリエント戦略4つの柱】
① 活気に満ちた都市
② プロアクティブな都市
③ オープンな都市
④ グリーンな都市
①活気に満ちた都市
市民のWell-being(幸福)や創造性、起業家精神を育てるために市内のアセットを活用します。多様性を受け入れ、包容力のある都市を目指しています。アテネ市のアイデンティティーを明確にして、新しい形での市民参加を模索しています。具体的には、ニューヨーク市のように、市民のアイデンティティー強化のためにアテネID(カード)を発行して、従来の市民概念のリニューアルと、アテネ市民としてのプライドを新たに持ってもらうための取り組みをしています。多様なバックグラウンドを持つ移民や難民との、市民としての一体感を持ってもらいたいという狙いもあります。さらには、雇用確保のためのサポートも重点的に行っています。
②プロアクティブな都市
将来にわたり持続可能な街として生き残っていくことを目指しています。まずは街の危機管理能力を高めていくこと(シナリオベースの危機管理計画を通じて)をゴールに掲げています。市民とのコミュニケーションを通じて、信頼感の醸成と、安全に暮らすことのできる環境整備を進めていこうとしています。古い建物は積極的に建て替えを検討します。ローカルコミュニティーのエンパワーメントだけではなく、アテネ都市圏を代表する自治体の首長たちの対外アピール力を高めることをゴールに据えています。アテネ市だけでの政策の取り組みではなく、近隣自治体との連携を重要視しています。
③オープンな都市
市民の生活をより効率的にするガバナンスの在り方を追求します。市民とのコミュニケーションやコラボレーションを通じて、データ(証拠)に基づいた政策決定環境を目指しています。「オープン」の言葉には、どんな時でも市民への説明責任を果たすことのできる街でありたいという願いが込められています。オープンデータ(行政が保有するデータを第三者が利用可能な形で公開すること)にも積極的に取り組んでいます。市内にある大学との協働も積極的に行っています。
④グリーンな都市
アテネ市内は緑にあふれています。将来にわたり緑にあふれる街であることが市民の願いでもあります。また、気候変動や環境の変化に耐え得る力を身に付けるための緑でもあります。緑を増やすだけではなく、街の中をつねにクリーン(清潔)にすることも力を入れています。さらには、さまざまなバックグランドの人が利用できる”co-creation“(協働)のための場も整備します。持続可能性の高い食料供給システム、およびエネルギー供給システムを作ることを目指しています。
新旧が入り交じる未来へ
アテネは古代から脈々と続く歴史があり、街づくりの観点からは制約が多い都市でもあります。一方で、100RCへの参画をきっかけとして、新しいことへの取り組みを積極的に進めていく姿勢を明確に打ち出しており、今後、新しい政策と古いものがどのように融合していくのか楽しみな都市でもあります。レジリエント戦略には、経済の低迷への具体的な方策は書かれていませんが、現在街の大きな収入源になっている観光は、今後も伸びが期待されます。オープンデータの取り組みは、観光客へのサポートを充実させる意味でも重要だと思います。また、アテネのレジリエント戦略で特徴的なのは、アテネ市だけではなく、アテネを中心とした広域経済圏を念頭に置いている点です。350万人にも上る大都市圏の持続性をいかに達成するのか、戦略が実を結ぶころに検証したいと思わせる都市でもあります。
(了)
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