先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)は20日、広島市で2日目の討議を行い、首脳声明を発表した。岸田文雄首相が提唱した「核兵器のない世界」の実現に向け、「軍縮・不拡散の取り組み強化へ具体的措置を取る」と強調。ロシアのウクライナ撤退に向け、圧力をかけるよう中国に要請するとした。討議では、法の支配の重要性について、新興・途上国「グローバルサウス」と共有していくことで一致した。
 首脳声明はウクライナに対し、「必要なだけ支援する」と明記。東アジア情勢に関し「台湾海峡の平和と安定の重要性」を指摘し、軍事的圧力を強める中国をけん制した。経済安全保障分野では「デカップリング(分断)ではなくリスク低減に基づき経済安保政策を調整する」と記した。
 首相は20日午後、インド、ブラジル、インドネシアなどのグローバルサウスを含め、招待した計8カ国の首脳、国連など国際機関のトップを会場のホテルで出迎えた。首相はG7と招待国首脳らとの拡大会合の冒頭、「世界が直面する複合的危機への連帯した対応について議論したい」と語った。
 これに先立つ午前中のG7のみの討議では、グローバルサウスとの関係強化を申し合わせた。バイデン米大統領はこのセッションを欠席した。
 拡大会合では食料危機について協議し、緊密な協力をうたった共同文書を発表。ロシアの侵攻が特に途上国で食料問題をさらに悪化させていることに「深い懸念」を示した。ジェンダーやエネルギーも議題となった。
 G7は20日、経済安保に関する独立した首脳声明も発表。中ロの経済的威圧に対抗する枠組み「調整プラットフォーム」新設などを盛り込んだ。
 初日の19日の討議では、核軍縮に向けて核戦力データの透明化を訴える「G7首脳広島ビジョン」を発表。中国を名指しし、「透明性を欠いた核戦力増強」に懸念を示した。首相は同ビジョンを「核軍縮に焦点を当てたG7初の独立首脳文書」と位置付けた。
 サミットには20日来日したウクライナのゼレンスキー大統領が、閉幕する21日に対面で参加。首相とも個別に会談する。
 首脳声明は21日に公表する予定だった。政府関係者によると、イタリアの豪雨被害を受けてメローニ首相が閉幕を待たずに帰国する可能性があるため前倒しした。 
〔写真説明〕先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の主会場で記念撮影に応じるG7首脳、招待国首脳、国際機関トップ=20日午後、広島市(代表撮影)
〔写真説明〕20日、広島空港に到着し、航空機内から出たウクライナのゼレンスキー大統領(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)