【ワシントン時事】先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)は、対中国を念頭に置いた経済安全保障に関する首脳声明を初めて発表し、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国や途上国を巻き込んで国際経済秩序を再構築すると表明した。G7が特定国への対抗策を重点的に協議したのは米ソ冷戦期以来。対中包囲網の形成を主導してきたバイデン米大統領は、議長国の日本と共に、「経済のG7」復活に向けて歴史的な転換を図った。
 G7が目指す経済安保は「デカップリング(切り離し)ではなくデリスキング(リスクの軽減)に基づくべきだ」。バイデン氏はサミットで、米中対立を背景とする世界経済の分断を回避しつつ、半導体や重要鉱物資源など戦略物資の国際サプライチェーン(供給網)を再編し、中国への過度な依存から脱却することが必要だと主張した。
 首脳声明に「分断の回避」を明記したのは、厳しい中国非難を表向き封印することで、アフリカやアジア、南米を含むグローバルサウスを取り込む思惑もある。ロイター通信によると、ドイツのショルツ首相は「対中投資や輸出を続ける」と強調。フランスのマクロン大統領も「中国に甘えはしないが、関与を望む」と配慮を見せた。
 G7サミットは、1970年代の石油危機と世界同時不況に対応するために始まった。日本はアジアで唯一の参加国として国際社会での存在感を保ってきたが、中国をはじめとする新興国が台頭するにつれ、G7の影響力は徐々に低下。2008年のリーマン・ショック後は、20カ国・地域(G20)首脳会議が脚光を浴びた。
 潮目が変わったのが、新型コロナウイルス禍とロシアによるウクライナ侵攻だ。医療物資やレアアース(希土類)を囲い込もうとする中国、エネルギー輸出を政治利用するロシア。多国間連携を重視するバイデン政権は、自国第一主義のトランプ前政権とは一線を画し、世界経済の主導権回復に向けてG7の立て直しを進めてきた。
 ただ、世界のGDP(国内総生産)に占めるG7の割合は、ピークだった冷戦終結時の7割から現在は4割程度まで下がっている。サミットの議長を務めた岸田文雄首相は「グローバルサウスから背を向けられれば、G7は少数派となる」と繰り返し危機感を訴えている。 
〔写真説明〕途上国向けインフラ投資に関する会合に出席したバイデン米大統領=20日、広島市内(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)