【パリ時事】フランスの首都パリ郊外で北アフリカ系の少年(17)が警官に射殺された事件で、市民らの抗議行動は6月30日夜も続いた。南部マルセイユや中部リヨン、東部ストラスブールでは放火、商店の略奪、建物の破壊といった違法行為が相次ぎ、内務省によると1311人が拘束された。27日の事件発生から4夜連続の暴動で、1日までに計2300人以上が逮捕された。
 フランスでは2005年、パリ郊外でアフリカ系の少年2人が警官に追われて感電死し、暴動が全国に広がった。旧植民地からの移民らが受ける職業上の差別や警察の暴力で鬱積(うっせき)した不満と怒りが爆発したとみられている。仏テレビに30日出演した専門家は、20年近くたっても「何も変わっていない」と指摘した。
 今回の暴動は29日から急拡大した。暴徒らはショーウインドーをたたき壊して商店に侵入し、商品を奪うなどして逃走。AFP通信によると、ストラスブールでは30日、米アップル直営店「アップルストア」などが狙われた。マクロン大統領は「少年の死を(略奪の口実に)利用するのは容認できない」と述べ、蛮行を非難した。
 30日夜から1日未明にかけては路上で2500件超の放火があり、車両1350台に火が放たれた。パリ北郊ペルサンでは市庁舎が炎上。マルセイユも被害が大きく、住民らはテレビで「この国は混乱に陥っている」「内戦だ」などと惨状を訴えた。
 各地でバス・路面電車の運行が午後9時までに短縮され、パリ周辺の自治体は夜間外出を禁止。警察は暴動対応を4万5000人態勢に増強したが、事態の沈静化には至っていない。
 ダルマナン内相によれば、逮捕された者の平均年齢は、射殺された少年と同じ17歳。少年の葬儀は1日、パリ郊外で営まれた。
 マクロン氏は1日、国内情勢を踏まえ、2日から予定していた仏大統領としては約23年ぶりとなるドイツ公式訪問を延期した。独大統領府が発表した。 
〔写真説明〕6月30日、パリ郊外ナンテールで、バスの消火活動を行う消防隊員(EPA時事)
〔写真説明〕1日、パリ近郊の暴動で燃やされた車(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)