【香港時事】香港は1日、英国から中国への返還26年を迎えた。香港国家安全維持法(国安法)の施行から3年がたち、当局による言論統制が一段と強まる中、返還記念日に行われてきた大規模デモは今年も見送りに。政府を批判する市民の声は封じられ、かつての熱気は消えうせている。
 香港では例年、7月1日に民主派団体が数十万人規模のデモを行い、政府トップの行政長官の「普通選挙」などを求めてきた。しかし、近年は新型コロナウイルス対策などで断念。国安法施行で反政府的な言動への取り締まりが厳しくなった影響もあり、コロナ禍が終息した今年も再開されなかった。
 デモが行われてきた香港島の大通りはこの日、市民らが歩く普段の週末と変わらない風景だった。2019年の大規模抗議デモに参加した大学4年の男性(22)は「以前より公の場で自分の意見を言いにくくなった。特に政治的な主張を人に伝えることには抵抗がある」と語った。
 香港政府は記念式典を例年通り開催し、李家超行政長官は「香港は全体的に安定している」と主張。一方で対抗勢力も潜んでいるとして、「自発的に国家安全を維持し、警戒を高めなければならない」と述べ、民主派の抑え込みを継続する姿勢を明確にした。 
〔写真説明〕1日、香港返還記念日のデモが封じられた香港の大通り(写真右)と、大規模デモが行われた2019年7月1日の同じ通りの様子(同左)
〔写真説明〕1日、香港返還26年記念式典の国旗掲揚式会場で、記念撮影する人々

(ニュース提供元:時事通信社)