子どもの風邪が猛威を振るっている。国立感染症研究所によると、夏風邪の一種ヘルパンギーナの患者数は過去10年で最多となり、夏から秋に拡大するRSウイルスも流行が続く。多くの学校で夏休みを迎える中、専門家は「ぐったりする、呼吸が速くなるなど明らかにいつもと違う症状なら、かかりつけ医にすぐ連絡を」と話している。
 ヘルパンギーナは急性のウイルス性咽頭炎で、38~40度の高熱や喉の痛みが主な症状。喉の痛みで飲食が困難な場合、脱水症状に注意が必要とされ、ウイルスが便に多く排出されるのも特徴だ。
 感染研によると、9日までの1週間に全国約3000の小児科から報告された患者数(速報値)は1定点医療機関当たり7.32人で、国が定める警報レベル(6人)を超えた。都道府県別では宮城(23.2人)が最多で、岩手(14.7人)、三重(12.47人)が続く。
 RSウイルスは発熱や鼻水が主な症状で、乳児らが初めて感染すると重症化する恐れもある。患者数は同様に3.38人で、例年より多い。大分(10.25人)が最も多く、島根(7.09人)、山口(7.07人)が続く。
 いずれも接触や飛沫(ひまつ)で感染するが特別な治療法はなく、解熱剤などの対症療法が中心となる。新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に移行した5月ごろから増え始めた。新型コロナ下での手洗い徹底などで感染者が減り、免疫が低下したことが要因とみられ、小児科では医療逼迫(ひっぱく)の恐れも出ている。
 新潟大の斎藤昭彦教授(小児感染症学)は「今夏は行動制限がなく、旅行や帰省を楽しむ子どもも多いと思うが、感染予防のためトイレ使用後の手洗いなどを徹底してほしい」と強調。「発熱などの症状だけなら自宅で安静にすれば問題ないが急にぐったりしたり、呼吸が苦しそうになったりしたら医療機関を受診してほしい。緊急時は救急車要請をためらわないで」と呼び掛けている。 

(ニュース提供元:時事通信社)