【北京時事】中国の秦剛国務委員兼外相の動静が途絶えて25日で1カ月。「外交の顔」の長期不在という異例の事態だが、中国外務省から説明はなく、重病や女性問題、権力闘争説など臆測が拡大し、外交日程にも影響が生じている。
 秦氏が最後に公の場に姿を現したのは6月25日のロシア外務次官らとの会談だ。中国外務省は今月11日、秦氏が「体調」を理由に東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相会議を欠席すると発表。前任者で外交トップの王毅共産党政治局員が代理出席した。同省の定例会見では、海外メディアが秦氏に関し質問しているが、報道官は「提供できる情報はない」の一点張りで、公式ホームページにそのやりとりは掲載されていない。
 秦氏の動向を巡っては、香港や台湾のメディアが新型コロナウイルスに感染したとの観測や、女性ジャーナリストとの不倫関係が問題視され当局の調査を受けているとの真偽不明の情報を伝えている。ところが中国の官製メディアは、秦氏の問題を一切取り上げていない。
 中国の著名論客、胡錫進氏はSNSに「ある事柄が秘密で、公の議論になじまないのは理解できるが、こうした状況は短期間であるべきだ」と投稿。名指しは避けているが、秦氏に関する情報公開を促したと受け止められている。
 対外的な影響も表面化し始めた。米ブルームバーグ通信は21日、クレバリー英外相が月内に予定していた中国訪問を延期したと報道。ブリンケン米国務長官は先月訪中した際、秦氏の訪米を招請したが、実現が不透明な状態が続いている。
 中国国営新華社通信は24日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会が25日に開かれると報じた。高官の任免を審議するといい、秦氏について何らかの決定が下される可能性もある。 
〔写真説明〕中国の秦剛国務委員兼外相=5月23日、北京(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)