【ガジアンテプ(トルコ)時事】半年前のトルコ南部を震源とする地震で甚大な被害を受けたシリア北部の反体制派支配地域では、国連の主要な越境支援がロシアの妨害で7月10日に停止されたことにより人道危機が一段と深刻化しつつある。シリア反体制派指導者のアブドルラフマン・ムスタファ氏は7日、「支援停止が続けば今後1、2カ月で食料は枯渇する。餓死者も出るだろう」と危機感を示し、国際社会に一刻も早い支援再開に向けた行動を呼び掛けた。
 ◇現在は備蓄でしのぐ
 ムスタファ氏は活動拠点のあるトルコ南部ガジアンテプでインタビューに応じた。シリア北部の反体制派支配地域には住民約400万人が暮らし、なおテント暮らしの被災者も多い。40度を超える酷暑が続くものの「現時点では支援停止前の備蓄があり、何とかしのげている」と述べた。
 ただ、枯渇まで「時間との闘い」であることを強調。食料のみならず衣料品や医薬品など「あらゆる必要物資」の支援が止まったと指摘。食料だけでは「冬の寒さに耐えられない」と訴えた。
 ロシアを後ろ盾とするシリアのアサド政権は、同政権が関与する形での支援再開なら認める構えだ。しかし、ムスタファ氏は「政権に従わない市民を平然と化学兵器で殺害する」アサド政権が間に入れば、支援が反体制派側に届かなくなると危機感を示す。
 ムスタファ氏は7日、国連人道問題調整事務所(OCHA)の支援責任者とガジアンテプで会談し、ロシアやアサド政権に依存しない形での支援態勢を速やかに構築するよう要請した。
 ◇反体制派にも疑念
 国連の支援は主にトルコ南部ハタイ県からシリア北西部イドリブ県に抜けるルートで行われてきた。しかし、7月10日以降、トルコ側のジルベギョズ検問所では「このルートを頻繁に行き来していた国連のトラックの車列は姿を消した」(現地のタクシー運転手)。一方、OCHAなどによると、トルコ南部キリス県とシリア北部アレッポ県を結ぶ別のルートでの支援はなお続いている。
 ただ、キリス県の検問所付近で取材に応じたトルコ南部とシリア北部アザズを行き来するシリア人男性(40)は「アザズを支配する反体制派武装組織は被災者向けの支援物資をトルコより高い値段で一般市民に販売している」と証言。食料などが本当に必要とする被災者に必ずしも届いていないと厳しい見方を示した。
 被災地での物資分配について、ムスタファ氏は「関与していない。現地の組織に任せている」と語った。 
〔写真説明〕7日、トルコ南部ガジアンテプでインタビューに応じるシリア反体制派指導者のアブドルラフマン・ムスタファ氏
〔写真説明〕トルコ南部ハタイ県とシリア北西部イドリブ県を結ぶ国境にあるトルコ側のジルベギョズ検問所=6日

(ニュース提供元:時事通信社)