【ニューデリー時事】「デジタル立国」を目指すバングラデシュで、政府機関から個人情報が流出する被害が相次いでいる。アジアの貧困国ながらIT人材を多く抱え、キャッシュレス化などデジタル社会に向けた取り組みを進めるが、セキュリティー対策の不備が露呈。政府が掲げる「スマート・バングラデシュ」のスローガンに冷や水を浴びせる事態となっている。
 現地報道によると、国民の基本情報を管理する「出生・死亡登録局」から人口の約3割に当たる少なくとも5000万人分の個人情報の流出が6月に発覚。名前や生年月日、電話番号などがインターネット上で誰でも閲覧可能な状態にさらされた。さらに政府系のバングラデシュ・クリシ銀行でも6月にハッカーがサーバーに侵入、財務情報や職員の個人情報が流出した。
 いずれの事案も、情報漏えいの事実を外部から指摘されていたにもかかわらず、対応が遅れたという。被害に遭った情報と引き換えに、金銭を要求する事件まで起きている。
 2016年には、中央銀行がハッカー攻撃を受け、約8100万ドル(約117億円)が盗み取られる事件が起き、北朝鮮のハッカー集団の関与が取り沙汰された。
 政府は今月、複数のハッカー集団が15日に大規模サイバー攻撃を予告しているとして各機関に対策と警戒を呼び掛けた。
 バングラのIT業界団体元会長サイード・アルマス・カビール氏は「サイバーセキュリティーに関する認識が決定的に欠けている。全ての重要データは暗号化やブロックチェーンなどの技術で保護する必要がある」と強調。国のデジタル化への移行を成功させるには、セキュリティー意識の向上や優れたデータ管理が必要だと訴えた。 

(ニュース提供元:時事通信社)