【ラハイナ(米ハワイ州マウイ島)時事】鼻を突き刺す焦げた臭い。眼前に広がるモノクロームの景色―。米ハワイ州マウイ島を襲った山火事で甚大な被害が出た西部のラハイナは、海を望みハワイ王国の歴史を探訪できる観光地の面影を失っていた。時事通信記者が16日、現地に入った。
 捜索と復旧のため通行制限していたラハイナに向かう主要道が16日、一般でも通れるようになった。海沿いにある中心部より高い位置を車で走ると、焼け焦げた車が所々に残されている。町に近づくにつれ、茂みが焼けた跡も点在していた。
 途中、中心部を見下ろす小高い丘に立ち寄った。近くには壁だけを残した家々が並ぶ。案内役で旅行ガイドの経験もある金安理香さん(58)は「この辺りは住宅が密集していた」と説明した。猛火の跡に残された白と黒の帯は海まで延び、カメラのレンズに納まり切らないほど広がっていた。
 市街地に入り、車の窓を開ける。焦げだけでなく、すっぱく刺激の強い臭いが鼻を突く。喉の痛みも感じた。「油の臭いもする」。金安さんがつぶやいた。中心部では行方不明者の捜索や復旧作業が続き、立ち入ることはできなかった。
 山火事発生から9日目を迎え、確認された死者は計111人となった。ハワイ州のグリーン知事は16日、米ABCテレビに「多くは海岸沿いの路上で亡くなった」と明らかにした。ラハイナは山と海に挟まれ、町を出る道路が限られるため、迫る炎から逃げ切れなかったとみられる。
 16日午後(日本時間17日午前)時点で捜索が終わったのは、火災現場の約4割。グリーン氏によると、依然1000人超と連絡が取れていない。当局は捜索犬や検視官の数を増やし、犠牲者の身元確認と被害の全容把握を急いでいる。
 在ホノルル日本総領事館によれば、マウイ島にいる数百人の在留邦人に関し、人的被害は報告されていない。引き続き情報収集や安否確認に当たっているという。 
〔写真説明〕16日、山火事で焼けた米ハワイ州マウイ島ラハイナの家屋
〔写真説明〕16日、山火事で大きな被害が出た米ハワイ州マウイ島ラハイナの街並み

(ニュース提供元:時事通信社)