西アフリカ・ニジェールでバズム大統領を失脚させたクーデターから、26日で1カ月。周辺国でつくる西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は当初、軍事介入をちらつかせてチアニ将軍率いるクーデター部隊に圧力をかけたが、将軍側は意に介さず、新政府樹立を通じ権力掌握を進めている。外交解決を第一とするECOWASや旧宗主国フランスとの隔たりは大きい。
 ◇武力行使案はどこへ?
 クーデター直後の焦点は軍事介入だった。ECOWASは「武力行使も排除しない」としてバズム氏の復権を要求。ガーナで先週開かれた軍首脳協議に参加した高官は「命令があれば、いつでも(軍事介入を)開始できる」と豪語したが、具体的行動には踏み出せていない。
 これに対しチアニ氏は19日、ECOWASが軍事介入しても「簡単にはいかない」と述べ、全面衝突も辞さない構えを示した。AFP通信によれば、同じく近年クーデターで軍政となった隣国マリやブルキナファソの外相が24日、首都ニアメーでチアニ氏と会談。「攻撃があればニジェールに介入する」ことで合意し、ECOWASとの対決姿勢を強めている。
 ニジェールには今週、ブルキナファソからトラック数百台が到着し、物資面でも支援していることが明確になった。軍事衝突が起きれば長期化し、多大な犠牲が出る恐れがある。
 ◇柔軟派の新首相
 交渉による解決の見通しも立っていない。チアニ氏は19日の演説で3年以内の民政復帰を提案したが、ECOWASは「冗談だろう」と一蹴。マリなどの軍政が民政復帰を先延ばしした例を挙げ、チアニ氏の案を拒絶した。
 ただ、ニジェール軍部隊は今月に入り、仏留学経験のあるゼイン元財務相を新首相に起用。文民を対外的な「顔」に据えることで、周辺国との交渉を絶やさず、孤立化を防ぐ狙いも透ける。
 シンクタンク「国際危機グループ」の専門家は、米紙ニューヨーク・タイムズに対し「将軍らは強硬派だが、ゼイン首相は柔軟派で国際社会との対話が可能だ」との分析を示している。 
〔写真説明〕西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の軍事介入に反対するニジェールのクーデター支持派=20日、ニアメー(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)