【ソウル時事】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が近くロシアを訪れ、軍事的な協力を進めるためにプーチン大統領と会談するという見方が強まっている。北朝鮮は、プーチン氏が主導するウクライナ侵攻を支持し、ロシアに接近。正恩氏が実際に訪ロすれば、新型コロナウイルス対策として国境を封鎖した2020年以降初の外遊となる。
 ◇弾薬提供で技術支援獲得か
 韓国の李鐘燮国防相は6日の国会答弁で、「(正恩氏が近くプーチン氏と会談する)可能性はある」と語った。北朝鮮が弾薬や軍事物資を提供する見返りに、ロシアから新兵器開発に向けた技術支援を受けることが想定される。李氏はロシアに対して、北朝鮮との兵器取引は「国連安全保障理事会決議に明確に違反する」と警告した。
 ロシアと北朝鮮は、双方の大陸間弾道ミサイル(ICBM)が酷似するなど、軍事協力がこれまでも疑われてきた。北朝鮮は国防力発展の5カ年計画に基づき核・ミサイルの開発を推進。こうした中、軍事偵察衛星や原子力潜水艦、小型核弾頭の技術支援をロシアに期待しているとみられている。
 ◇中朝ロの連携演出か
 ウクライナ侵攻開始後、北朝鮮とロシアの蜜月ぶりは際立っている。朝鮮戦争休戦から70年を迎えた7月27日に合わせ、ロシアのショイグ国防相が訪朝した。正恩氏はショイグ氏を兵器の展示会に案内し、弾道ミサイルや無人機などを自ら紹介。兵器の「トップセールス」とも評された。
 休戦70年では、中国の李鴻忠・共産党政治局員が訪朝し、中朝ロの動きが活発となる兆しも出ている。韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は、訪朝したショイグ氏が、正恩氏に対して中朝ロによる海上合同訓練を提案したと指摘。北朝鮮は「他国との軍事訓練をしたことがない」(韓国政府関係者)とされ、実現すれば、安全保障分野で結束を強める日米韓に対抗する形で、中朝ロの連携を演出することになる。
 長期の国境封鎖や国際社会の制裁により経済状況が悪化する北朝鮮は、ロシアから食料支援も引き出そうとしているもようだ。国情院の分析では、北朝鮮で1~7月に約240人が餓死し、直近5年の平均の2倍以上に上っている。また、9月23日に開幕する杭州アジア大会に合わせ、正恩氏が訪中し、習近平国家主席と会談すると予測する専門家もいる。 

(ニュース提供元:時事通信社)