【ニューヨーク時事】米国で高病原性鳥インフルエンザの感染拡大に歯止めがかからない。4月に大規模な養鶏場での発生が相次ぎ、鶏などの殺処分が急増。上昇基調にある卵価格が一段と跳ね上がりそうだ。感染は牛にも波及し、牛乳からウイルスの痕跡が発見されるなど混乱が広がっている。
 当局によると、4月に殺処分の対象となった鶏などは前月比約280倍の880万羽に膨らんだ。米国内で流行が始まった2022年以降、鶏などの殺処分数は計9000万羽を超えた。卵価格は昨年1月をピークに下落傾向が続いていたが、今年3月は12個入り(大型)の都市部平均価格は約3ドル(約460円)と、昨年12月と比べて2割上がった。鳥インフルの余波や原材料高が要因とみられる。
 感染が見つかった養鶏場からの出荷再開には、消毒作業などを経て半年程度かかるとされる。足元の感染急拡大が尾を引き、食卓への影響が長引く可能性もある。
 牛で相次ぐ感染も畜産関係者の悩みの種だ。今年3月に南部テキサス州で初めて確認されて以降、感染は9州に拡大。当局の検査で市販の牛乳にウイルスの粒子が混じっていたことも判明した。米当局は畜産物の安全性を強調するが、南米コロンビアは米産牛の一部への輸入制限を導入したほか、カナダは米国からの繁殖用牛の輸入要件を厳格化した。
 渡り鳥が世界中でウイルスを拡散する中、世界保健機関(WHO)は「米国以外にも牛の感染が広がるリスクがある」と警戒を強めている。 

(ニュース提供元:時事通信社)