岸田文雄首相は来月3~5日の日程を軸にフィリピンとマレーシアを訪問する方向で調整している。東南アジア諸国連合(ASEAN)との友好協力関係50周年を記念して12月に東京で開く特別首脳会議を見据え、両国首脳と連携を確認。南シナ海への進出を強める中国をけん制したい考えだ。
 首相の訪比は2月に来日したマルコス大統領の招請を受けたもので、両首脳は安全保障面の協力推進を申し合わせる。対中接近を強めたドゥテルテ前政権と異なり、マルコス氏は日米との関係強化に乗り出している。対中関係でも、領有権を争う南シナ海のスカボロー礁に中国が9月に障害物を設置するなど、緊張が高まる。
 一方、マレーシアのアンワル首相は昨年11月の就任以来2度訪中するなど中国への傾斜が指摘される。岸田首相とアンワル氏は、9月のASEAN関連首脳会議で短時間懇談したが、正式な会談は初めてで、岸田首相としては安保環境への危機感を共有したい考えだ。
 フィリピンとマレーシアは、「同志国」軍向けに日本政府が創設した「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の初年度の対象国。首脳会談では、具体的な内容についても協議するとみられる。
 首相は就任以来、ASEAN加盟国5カ国を訪れており、今回で計7カ国となる。残りの3カ国のうち、軍事政権下のミャンマーを除くブルネイ、ラオスなどには8日から上川陽子外相が歴訪している。 
〔写真説明〕自民党本部を出る岸田文雄首相=10日午後、東京・永田町

(ニュース提供元:時事通信社)