【イスタンブール時事】イスラエルによる軍事作戦が続くパレスチナ自治区ガザで100万人を超える避難民が発生したとされる中、ガザに隣接するエジプトは大量の住民が越境して自国に流入する事態への懸念を深めている。シシ大統領は、避難民受け入れに断固反対の立場だ。
 大規模地上作戦の準備を進めるイスラエル軍は、ガザ北部の全住民約110万人に対して南部への退避を勧告。シシ大統領は15日、ブリンケン米国務長官との会談で、こうしたイスラエルの対応は自衛権の発動を超えた「集団的懲罰だ」と強く非難した。
 シシ氏は12日の演説でガザ住民への対処を巡り、エジプトは「既にさまざまな国から計900万人を受け入れている」と説明。ただ、パレスチナ人については自らの土地で暮らすという「大義」が失われるため、受け入れられないと指摘した。
 一方、ブリンケン氏は15日報じられた中東の衛星テレビ局アルアラビーヤのインタビューで、ガザ住民をエジプトに追放するような状況を「支持しない」と明言。あくまでガザの域内で、避難民支援を強化していく考えを示した。
 2010年代初めにイスラエルのネタニヤフ政権下で副外相を務めたこともあるアヤロン元駐米大使は、13日放送の衛星テレビ局アルジャジーラのインタビューで、ガザ住民はエジプト東部シナイ半島の砂漠に移動すべきだと発言。「砂漠には無限のスペースがあり、われわれと国際社会がテントなどインフラを用意する」と主張した。
 1948年のイスラエル建国後、同国の領土となった土地にそれまで暮らしていたパレスチナ人の多くが故郷を追われた。イスラエルは自らを「ユダヤ人国家」と位置付け、難民の帰還権を認めていない。 
〔写真説明〕会談するブリンケン米国務長官(左)とエジプトのシシ大統領=15日、カイロ(ロイター時事)

(ニュース提供元:時事通信社)