インフルエンザや新型コロナウイルスの流行で、医薬品不足が深刻化しつつある。背景にあるのは、全体の約8割を占めるジェネリック医薬品(後発医薬品)の供給構造だ。多くのメーカーが重複して少量ずつ生産しているが、品質不正問題で複数社が製造停止に追い込まれ、供給が不安定化した。厚生労働省はこうした「少量多品目」構造の解消と安定供給に向けて本腰を入れており、専門家会議で生産の集約化などを検討している。
 厚労省によると、事の発端は2021年以降、「小林化工」(福井県あわら市)や「日医工」(富山市)など後発薬メーカー十数社が品質不正により相次いで業務停止の処分を受けたことだ。22年8月末には後発薬の約4割が出荷停止となった。
 新型コロナやインフルの流行拡大が追い打ちをかけ、せき止めや解熱鎮痛剤など医薬品全体の供給不安が出ている。日本製薬団体連合会によると、「供給停止」や「限定出荷」は今年9月時点で、全1万7682品目の22.9%に達した。厚労省によると、特にせき止め薬は、コロナ前と比べて15%も供給量が低下したままだ。
 武見敬三厚労相は今月18日、主要メーカー8社に増産を要請した。日本医師会も6日、医療機関の7割以上が医薬品不足に直面したとする緊急調査結果を公表。せき止め薬などの不足が目立ち、国やメーカーに対策を求めた。
 後発薬は、薬価算定後は少なくとも5年間の安定供給の義務がある。一方、同種薬の多さなどから薬価の下落が続き、企業の生産効率や収益性は低下。採算を確保するために新たな品目を投入することで、「少量多品目」の悪循環が生じているとされる。
 厚労省の専門家会議は7月、後発薬の安定供給に向けた議論を開始。今月、安定供給に貢献しない企業の新規参入を抑制するほか、医療上の必要性や市場シェアの低い品目の整理などを盛り込んだ中間報告を公表した。企業の再編促進策なども議論し、年内にも対策案をとりまとめる方針だ。 

(ニュース提供元:時事通信社)