【エルサレム時事】イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザで地上侵攻を進める中、北方の隣国レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラとイスラエル軍の交戦が激しくなっている。ガザを実効支配するイスラム組織ハマスに同調するヒズボラは過去数日、イスラエル領内へのミサイル攻撃や砲撃を強めており、イスラエル側は北部でも臨戦態勢を取らざるを得なくなっている。
 イスラエル軍は連日、ヒズボラの攻撃に対抗してレバノン南部の拠点を空爆している。12日はレバノンからイスラエルへミサイルなど15発が撃ち込まれ、軍はうち4発を迎撃。しかし、イスラエル兵7人、市民十数人が負傷した。13、14両日もイスラエル北部への砲撃が相次ぎ、イスラエル軍はレバノン南部への反撃を繰り返した。
 11日に北部国境沿いを視察したガラント国防相は、「われわれがガザでできることは、(レバノンの首都)ベイルートでもできる」と強調。ネタニヤフ首相も13日、「われわれが一部の力しか見せていないからといって試そうとしてはならない。危害を加えれば応酬する」と警告した。
 イスラエル軍報道官は12日、「軍はガザに注力しているが、北部でも備えは十分だ。北部の安全保障環境を変える作戦計画を持っている」と述べ、大規模なヒズボラ攻撃を示唆した。ただ、ガザの地上作戦は長期化が必至で、戦力の分散を強いられるヒズボラとの本格的な戦闘は避けたいのが本音だ。
 ヒズボラの指導者ナスララ師は11日、対イスラエル攻撃で新型ミサイルや攻撃型無人機を初めて投入したと主張し、威嚇を弱める気配はない。後ろ盾であるイランの意向や、圧倒的な軍事力の差もあり、ヒズボラは宣戦布告には消極的とみられるものの、イスラエル紙ハーレツは「イスラエルが緊張激化のペースを制御できておらず、計算違いが起きるリスクは増している」と報じている。 
〔写真説明〕13日、対イスラエル国境に近いレバノン南部の村で、イスラエルからの砲撃を受けて上がる煙(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)