【エルサレム時事】日本郵船が運航する自動車運搬船を紅海で拿捕(だほ)したイエメン武装組織フーシ派は、イスラム組織ハマスと交戦するイスラエルへの攻撃継続を宣言している。イスラエルのパレスチナ自治区ガザ侵攻後は、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラと並ぶ「反イスラエル」急先鋒(せんぽう)となっており、船舶解放など事態打開には時間がかかる恐れもある。
 フーシ派の報道官は19日、拿捕を発表した声明で「イスラエルに関連する全ての船は正当な攻撃対象となる」と敵対姿勢を鮮明にした。バハマ船籍でトルコからインドへ向かっていた同運搬船は、所有する英企業にイスラエル人が関与していると伝えられるが、外観からはイスラエルとの関係を明確に示すものはうかがえず、イスラエル人の乗員もいなかった。それでもフーシ派は「イスラエルの船」と断定し、「地域の安全と安定を脅かしているのはシオニスト政権(イスラエル)だ」と批判の矛先をイスラエルへ向けた。
 フーシ派はイスラエルへ巡航ミサイルや無人機を使った攻撃を繰り返しているが、米国防総省は10月、米海軍の軍艦がミサイルなどを撃墜したと発表。一方のフーシ派も11月に入って紅海上空で米無人偵察機を撃墜するなど、対立が激化する兆しも出ている。
 フーシ派が攻撃を緩めない背景には、後ろ盾とされるイランの意向もあるとみられる。イランは中東全域への紛争拡大は望んでいないと公言するが、親イラン組織によるイスラエルや米国の権益に対する敵対行為は事実上容認。今回の拿捕を「イランのテロ」と批判するイスラエルは、警戒を強めている。
 フーシ派は、拿捕について「抑圧を受け、恐ろしい爆撃と包囲の下にあるパレスチナ人への宗教的、人道的、道徳的責任に基づく作戦だ」と主張。「ガザ侵略、パレスチナ同胞への犯罪が終わるまで攻撃をやめない」と明言した。解決にはイランなどの働き掛けも必要とみられるが、ロイター通信によると、イラン外務省報道官は20日、拿捕への関与を否定した。 
〔写真説明〕パレスチナへの連帯を示し、パレスチナ旗の前で警備に当たるフーシ派の兵士ら=13日、イエメンの首都サヌア(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)