来年2月でロシアによる侵攻が丸2年となるウクライナで、深刻な兵員不足の恐れが出ている。ゼレンスキー大統領は19日の記者会見で「軍が45万~50万人の追加動員を提案した」と明らかにした。大統領は提案を支持しなかったとしているが、今後の戦況次第では大規模な動員を選択せざるを得ないとみられている。
 ウクライナは今年6月に反転攻勢を開始した。ただ、期待に反し大きな成果に乏しいのが実情だ。ゼレンスキー氏が「前進」を強調するのに対し、軍トップのザルジニー総司令官は11月、「戦況が行き詰まった」と認めた。
 戦闘では一般的に防御側よりも攻撃側の方が損耗が大きい。反転攻勢開始後、ウクライナ側の死者は増えているという見方が有力だ。
 ロシアのショイグ国防相は19日、プーチン大統領に戦況を報告。ウクライナ側の戦死傷者は侵攻を通じて「約38万人」、反転攻勢が始まった後に限ると「約16万人」と主張した。この数字はかなり誇張されている可能性が高いが、ロシア紙RBK(電子版)は、ウクライナ側の死傷者の「40%以上が反転攻勢以降」だとする分析を伝えた。
 侵攻の長期化により、ウクライナで新たに動員される兵士は高齢化しているもようだ。米誌タイム(電子版)は10月末、ウクライナ高官の話として、兵士の平均年齢が「43歳に上がった」と報道した。戦況の停滞が続けば、国内で厭戦(えんせん)ムードが広がり、政権に対する不満が高まりかねない。大統領選が来年に予定される中、ゼレンスキー氏は難しい選択を迫られている。 
〔写真説明〕19日、キーウ(キエフ)で記者会見するウクライナのゼレンスキー大統領(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)