【ワシントン時事】米中対立の激化を背景に、米国の貿易構造が変化しつつある。対中制裁関税や半導体規制などを受け、中国からのモノの輸入が急減する一方、貿易協定を結ぶメキシコや、関係強化を進める東南アジアの存在感が増大。2023年のモノの国別輸入額では、中国が08年以来15年ぶりに首位から陥落する公算が大きくなっている。バイデン米政権は対中強硬姿勢を強めており、輸入縮小の流れが加速する可能性もある。
 「関税や輸出規制も選択肢の一つ」―。レモンド米商務長官は12月下旬、米テレビインタビューで、巨額補助金を受けた安価な中国製半導体に対する米企業の依存度が高まっている可能性に言及。防衛産業や米企業の基盤を揺るがしかねないと説明し、貿易制限措置も辞さない姿勢を見せた。電気自動車(EV)や太陽光発電設備などへの追加関税も浮上している。
 米国の中国からの輸入は00年以降に増加ペースを速め、18年には5000億ドル(約71兆円)超と約5倍に膨らんだ。流れを変えたのは、トランプ前政権。知的財産権の侵害などを理由に、計3700億ドル相当の中国製品に制裁関税を課すと、輸入は減少に転じた。
 バイデン政権は、制裁関税の多くを引き継いだのに加え、友好国との間でサプライチェーン(供給網)を完結させる「フレンドショアリング」を掲げ、中国に偏る米企業の部品調達先や生産拠点の分散を促進。安全保障を理由に、中国への先端半導体や製造装置の輸出規制も打ち出し、「分断」を進めた。
 一時はコロナ禍からの反動増が見られたものの、23年1~10月の中国からの輸入額は約3600億ドルと、前年同期比2割超減少した。
 ただ、米ピーターソン国際経済研究所によると、中国の代替地として米国が関係強化を図るベトナムやインドなどは、過去10年間で輸入に占める中国の割合が高まっているのが現状。バイデン政権が狙う友好国と協力した供給網の「脱中国」は、「困難な問題に直面している」と指摘している。 

(ニュース提供元:時事通信社)