経済協力開発機構(OECD)は11日、対日経済審査報告書を公表した。コロナ禍後のサプライチェーン(供給網)回復や観光客の増加に支えられた現在の景気回復は「不確実性の高まりを背景に勢いを失っている」と指摘した上で、「生産性が向上しない限り、急速な高齢化が成長を鈍化させる」と警告した。
 OECDは、日本にはスタートアップ(新興企業)の数が比較的少ないと分析。「スタートアップに対するインセンティブ(動機付け)が企業の生産性と潜在的成長力を高め、高齢化の圧力に対処するカギとなる」と強調した。
 また、若者や女性の非正規雇用の割合が高く、賃金上昇やキャリア形成の見通しが悪いために非婚化が進んでいると懸念を表明。「育児休暇を取得する男性は少数で、期間も短い」と説明し、ワーク・ライフ・バランスの改善など、家族と子供への支援策で出生率が上昇する可能性があると提言した。
 OECDのコールマン事務総長は東京都内の日本記者クラブで会見し、日本のインフレ率は安定的に2%程度にとどまると予測。「実質賃金はいまだに低いが、企業の賃上げなどの効果で2024~25年は伸びが勢いを増す」との見通しを示した。
 また、現行の消費税率10%は「OECD内で最低の部類に入る」と指摘。国が公的債務を増やさずに歳入を確保する手段の一つとして消費増税を挙げた上で、低所得層への影響を避けるため「十分前もって発表し、段階的に行うべきだ」と訴えた。 

(ニュース提供元:時事通信社)