2024/01/15
防災・危機管理ニュース
最大震度7を観測した能登半島地震は石川県内の至る所で地滑りを引き起こし、発生から2週間がたった現在も道路の一部が寸断されたままだ。ブランド牛「能登牛(うし)」を飼育する「能登牧場」(能登町)では約1000頭が危機に直面している。牧場主の平林将さん(40)は「餌はもって、あと1、2週間。命に責任を持てず、悔しい」と窮状を訴える。
約1000頭を飼育し、年間約500頭を出荷する平林さんは、実家が牧場を営んでいた群馬県から2014年に移住した。1頭ずつ健康状態をチェックするなど丹精込めて育て、和牛コンテストでこれまで8連覇した。
元日は立っていられないほどの横揺れに見舞われ、牛舎も大きく揺れた。平林さんは「普段は鳴かない牛たちが大合唱のように鳴き続け、異様な感じだった」と振り返る。
断水と停電で飼育環境は悪化した。タンクにためていた水を人力で牛舎に運んだが、1頭当たり1日30リットルが必要なところ、4~6リットルしか与えてあげられなかった。4日には1頭が衰弱死したという。その2日後に電気が復旧しポンプで地下から送水できるようになったものの、次は餌不足に直面した。
牧草や餌を運ぶための10トントラックが通る道は崩落。年末年始で蓄えた餌でしのぎ、「このままでは、あと1、2週間で底を突く」と明かす。
出荷前に死んでしまった牛は焼却処分となる。平林さんは「牛を出荷するのと、他の要因で死なせてしまうのとでは天と地の差がある」と語る。「人間の管理が行き届かないせいで無駄に死なせることは、食べてほしくて育てている身として悔しい」とうなだれる。
出荷が迫っていた12頭については、10日に崩落しかけた道を強行して牧場から出すことができた。平林さんは「支援が人命優先なのは仕方がない」といい、「道路さえ復旧すれば餌はどうにかできる。牛たちに地震前のストレスのない環境を取り戻してあげたい」と話した。
〔写真説明〕不安を語る能登牧場の平林将さんとブランド牛「能登牛」=13日午前、石川県能登町
(ニュース提供元:時事通信社)
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