250人超の死者・安否不明者を出した能登半島地震について、石川県の防災会議・震災対策部会長を務める神戸大の室崎益輝名誉教授(防災計画学)が31日までに時事通信の取材に応じ、「予想をはるかに超えた地震だったが、初動に問題があった」と語った。
 室崎氏は地震発生後、2回に分けて輪島市や珠洲市などを現地調査した。「被害の残酷さは阪神大震災以上だ。立派な邸宅や重要文化財の寺社が軒並み壊れ、輪島市では火災による被害も大きかった」と振り返る。
 能登半島では多数の道路が寸断され、一時は4市町24地区で計3300人以上が孤立状態に。自衛隊や消防などによる救助、救援活動も阻まれ、「いち早く空から被害状況を把握し、国のトップに情報を与えないといけなかった」と指摘した。
 県の地震被害想定は、25年以上前の調査を基に定められていた。2023年5月の防災会議では2年間で抜本的に見直す方針を確認していたが、地震の発生確率などを評価する国の「長期評価」の公表遅れもあり間に合わなかったという。
 室崎氏は「長期評価に基づいて被害想定を出すのが慣行だった。結果待ちの姿勢が裏目に出た」とした上で、「集落にあらかじめ衛星携帯や1カ月分の食料を備蓄するなど、孤立する前提で計画を作るべきだった」と悔やんだ。
 一方、津波の避難行動は徹底されていたと評価。輪島市の観光名所「朝市通り」で起きた大規模火災を例に挙げ、「救助と消火と避難のどちらを優先するかはケース・バイ・ケース。今回は逃げるのが正解で、心残りもあるだろうが割り切らないといけない」と話した。
 「想定外の想定外」と繰り返し表現した室崎氏。「防災は常に裏切られる。だから初動対応が重要で、災害が起きた瞬間にどういう態勢をつくって指示を出し、誰に応援を求めるかを判断しないといけないが、それができなかった。今もボランティアなど支援の手は足りていない」と語った。 
〔写真説明〕オンライン取材に応じる神戸大の室崎益輝名誉教授=1月30日

(ニュース提供元:時事通信社)