【ワシントン時事】11月の大統領選で、トランプ前大統領が共和党の指名獲得に大きく前進した。トランプ氏は、自動車など製造業の保護を掲げ、関税の大幅引き上げを主張。巨額の貿易赤字を問題視し、日欧などの友好国にも矛先を向ける。バイデン政権の気候変動対策を「極端な左翼政策」と断じて転換を表明し、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの再離脱を明言した。
 「バイデン政権は、『損失』とも言われる貿易赤字を記録的に増やした。多くの雇用が失われ、多額の富を流出させた」。トランプ氏の公約集では、貿易赤字の削減を目指し、関税の引き上げや他国に市場開放を迫る取り組みが並ぶ。
 ほとんどの外国製品への関税を一律に引き上げる「普遍的基本関税」を提唱し、昨夏には「例えば10%」と税率にも言及した。また「世界の平均関税率は、米国の2倍以上だ」と強調し、他国が米国製品に高関税を課している場合、米国も同率まで引き上げる法律の必要性も訴える。
 特に貿易相手国・地域の中で最大の貿易赤字国である中国に対しては、60%超の高関税や、優遇関税での輸入を認める「最恵国待遇」の撤回を主張。「雇用を守り、外国依存を解消し、外国企業から数千億ドルの収入を得る」と効果を強調する。
 バイデン政権は、半導体輸出規制など対中強硬姿勢をとりつつ、友好国とは関係強化に動き、日米など14カ国による経済圏構想、インド太平洋経済枠組み(IPEF)も打ち出した。一方のトランプ氏は、前回の大統領在任中、多国間よりも2国間関係を重視。高関税をかけ合う米中貿易戦争に火を付けただけでなく、日本に市場開放を迫り、欧州とも摩擦を引き起こした。当選した場合、IPEFから脱退する方針も示しており、再び多国間の取り組みに背を向ける可能性が高い。
 エネルギー政策では、気候変動対策を撤回し、国内での石油や天然ガスの生産を奨励。ガソリンなどのエネルギー価格引き下げを狙う。バイデン氏の電気自動車(EV)優遇策も、バッテリーなどの部品で高シェアを握る「中国への依存につながる」と批判する。
 トランプ氏の公約は、前回在任時の政策を加速させるものが目立つ。財政政策でも「トランプ・タックス・カット(減税)」を唱え、国内では再び法人税などの引き下げを進める考えだ。 

(ニュース提供元:時事通信社)