元日に発生した能登半島地震は、石川県だけでなく隣の富山県にも大きな被害をもたらした。氷見市栄町の新道町内会がある地区では地盤の液状化が発生。家に住めなくなり、被害世帯の8割弱が転出を希望している。町内会の会長を務める鎌和紀さん(72)も転居を余儀なくされ、「寂しいという言葉しかない」と肩を落とす。
 沿岸部にある同地区では、海岸沿いを走る県道付近を中心に液状化が起きた。建物の倒壊は少なかったものの、至る所で地割れが起き、応急危険度判定で「立ち入り危険」を示す赤紙が多くの家に貼られた。地震発生から約2カ月がたっても人通りはまばらだ。
 被害のあった家の住人を対象に町内会が実施したアンケートによると、39世帯のうち30世帯が転出する意向を表明。6年にわたり町内会長を務める鎌さんもその一人だ。
 鎌さんの家は、地震の影響で地面が隆起し、倒壊の恐れがあると認定された。長年暮らした自宅への愛着はあったが、「次に地震があった際はもっと大きな被害を受けるのではないか」と思い、転居を決意した。鎌さんによると、地盤改良にかかる費用や時間を理由に転出を決める人が多いという。
 新年会やバーベキュー大会などのイベントが頻繁に行われ、「つながりが深い町だった」と振り返る鎌さん。3月中に氷見市内の別の地区に転居するが、新道町内会の「取りまとめ役」は続けるという。「残る決断をした人には高齢者も多い。自分にできる支援は行いたい」。離れても、町の行く末を見守るつもりだ。 
〔写真説明〕液状化とみられる影響で傾いた門柱と隆起した地面=2月24日、富山県氷見市
〔写真説明〕取材に応じる新道町内会長の鎌和紀さん=2月24日、富山県氷見市
〔写真説明〕液状化とみられる影響で隆起した地面と、応急危険度判定で「危険」と判断された家屋=2月24日、富山県氷見市

(ニュース提供元:時事通信社)