ロシアのNGO「兵士の母委員会連合」のワレンチナ・メリニコワ代表(78)が、7日までに時事通信のオンライン取材に応じた。ウクライナ侵攻が3年目に入ったロシアでは、前線に送られた予備役兵士の妻らが動員解除と帰還を求めてデモを続けている。メリニコワ氏は妻らの要求について「追加動員」が前提のため、反戦を掲げるNGOとして「支援できない」と苦しい胸の内を明かした。
 プーチン大統領は2022年秋、予備役30万人の部分動員令を発出。侵攻は長期化しているが、今月の大統領選を控えて世論が反発する追加動員に踏み切れず、帰れない兵士がしわ寄せを受けている。政権は言論弾圧で「反戦デモ」を封じたが、「帰路」運動と呼ばれる妻らのデモが広がり、拘束者も出ている。
 若者らの1年間の兵役義務とは異なり、即戦力の予備役動員は無期限。メリニコワ氏は「動員解除がないとは(妻らの)誰も想定していなかった。2年間も戦闘に従事するのはひどい」と同情する。
 一方、同NGOは妻らのデモに関わっておらず、支援は「倫理的に非常に難しい」とも吐露。兵士を復員させる場合、「国家が別の数十万人を動員しなければならなくなる」点は看過できないと語った。休暇なしに戦うことを強いられる予備役の窮状をおもんぱかりつつ、兵士の交代と戦争の継続は「われわれのアプローチではない」と、あくまで反戦の立場を堅持した。
 現在、同NGOへの支援要請が多いのは、捕虜か戦死傷者かすら分からない「行方不明者」の問題だ。ウクライナとの連絡が難しいことに加え、ロシアが人的損害を伏せていることが、壁として立ちはだかっているという。メリニコワ氏は「(1999年から10年間続いた第2次チェチェン紛争時の)ピークですら、要請は年間約1万5000件だった。それが今や3カ月で約1万5000件に上っている」と説明し、侵攻の規模と長期化の影響を指摘した。 
〔写真説明〕ロシアのNGO「兵士の母委員会連合」のワレンチナ・メリニコワ代表=2004年11月、モスクワ(AFP時事)
〔写真説明〕「無名戦士の墓」に献花するロシア兵士の親族=1月27日、モスクワ(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)