2024/03/08
防災・危機管理ニュース
ロシアのNGO「兵士の母委員会連合」のワレンチナ・メリニコワ代表(78)が、7日までに時事通信のオンライン取材に応じた。ウクライナ侵攻が3年目に入ったロシアでは、前線に送られた予備役兵士の妻らが動員解除と帰還を求めてデモを続けている。メリニコワ氏は妻らの要求について「追加動員」が前提のため、反戦を掲げるNGOとして「支援できない」と苦しい胸の内を明かした。
プーチン大統領は2022年秋、予備役30万人の部分動員令を発出。侵攻は長期化しているが、今月の大統領選を控えて世論が反発する追加動員に踏み切れず、帰れない兵士がしわ寄せを受けている。政権は言論弾圧で「反戦デモ」を封じたが、「帰路」運動と呼ばれる妻らのデモが広がり、拘束者も出ている。
若者らの1年間の兵役義務とは異なり、即戦力の予備役動員は無期限。メリニコワ氏は「動員解除がないとは(妻らの)誰も想定していなかった。2年間も戦闘に従事するのはひどい」と同情する。
一方、同NGOは妻らのデモに関わっておらず、支援は「倫理的に非常に難しい」とも吐露。兵士を復員させる場合、「国家が別の数十万人を動員しなければならなくなる」点は看過できないと語った。休暇なしに戦うことを強いられる予備役の窮状をおもんぱかりつつ、兵士の交代と戦争の継続は「われわれのアプローチではない」と、あくまで反戦の立場を堅持した。
現在、同NGOへの支援要請が多いのは、捕虜か戦死傷者かすら分からない「行方不明者」の問題だ。ウクライナとの連絡が難しいことに加え、ロシアが人的損害を伏せていることが、壁として立ちはだかっているという。メリニコワ氏は「(1999年から10年間続いた第2次チェチェン紛争時の)ピークですら、要請は年間約1万5000件だった。それが今や3カ月で約1万5000件に上っている」と説明し、侵攻の規模と長期化の影響を指摘した。
〔写真説明〕ロシアのNGO「兵士の母委員会連合」のワレンチナ・メリニコワ代表=2004年11月、モスクワ(AFP時事)
〔写真説明〕「無名戦士の墓」に献花するロシア兵士の親族=1月27日、モスクワ(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)
- keyword
- ロシア
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/12/05
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/03
-
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
-
-
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方