【ワシントン時事】バイデン米大統領は7日夜(日本時間8日)、連邦議会の上下両院合同会議で一般教書演説を行った。再選を目指す11月の大統領選をにらみ、任期中の内政や経済、外交の実績を誇示。選挙戦の相手となるトランプ前大統領と対決する姿勢を鮮明にした。
 今回の一般教書演説は、民主、共和両党の候補者を選ぶ予備選・党員集会が集中する5日のスーパーチューズデーの直後に行われた。バイデン、トランプ両氏の再戦の構図が固まってから最初の重要な政治イベントで、論戦の事実上の幕開けとなった。
 バイデン氏は「自由と民主主義が国内外で攻撃を受けている」と指摘。トランプ氏を「私の前任者」と呼び、2021年にトランプ氏の支持者が起こした連邦議会襲撃事件を「南北戦争以来の民主主義に対する脅威だ」と批判した。
 また、ロシアの侵攻を受けるウクライナを支援するための予算承認を議会に要求。北大西洋条約機構(NATO)の拡大を成果に挙げ、加盟国への攻撃をロシアに促すかのようなトランプ氏の発言を「言語道断で、容認できない」と糾弾した。
 バイデン氏はさらに、新型コロナウイルスの流行に伴う不況から景気を回復させたと誇り、「私は瀬戸際にあった経済を(トランプ氏から)引き継ぎ、今や世界の羨望(せんぼう)の的になった」と訴えた。トランプ氏が批判を強める移民問題については「解決する準備がある。今すぐ法案を送ってくれ」と共和党に協力を呼び掛けた。
 イスラエル寄りとの批判を浴びているパレスチナ問題では、自治区ガザでの即時の戦闘休止実現に取り組んでいるとアピール。ガザ沿岸に支援物資の搬入拠点を設置する計画も明らかにした。
 中国に関しては「競争は求めるが、対立を求めていない」との方針を再確認。「われわれは台湾海峡の平和と安定のために立ち上がる」と語り、日本などとの同盟関係を活性化したと強調した。
 このほか、最高裁が人工妊娠中絶の権利を認めた判決を覆したことを受け、中絶の権利を擁護すると表明。経済政策では、富裕層への課税強化などを打ち出した。
 バイデン氏陣営は、注目を集める一般教書演説を、81歳という高齢への不安を払拭する機会と位置付けており、演説では「若かろうが老いていようが、何が長く生きるかを知っている。(それは)米国の理念だ」と反論した。 
〔写真説明〕7日、米首都ワシントンの連邦議会で、一般教書演説に臨むバイデン大統領(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)