【イスタンブール時事】イスラム教徒の信仰心が高まるラマダン(断食月)が迫り、信徒が多い中東での緊張激化が懸念されている。パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が長期化する中、今年は「戦時下」で迎える異例のラマダンとなる。ハマスとの連帯を示す過激な武装勢力などによるイスラエルや欧米諸国を狙ったテロへの警戒も強まっている。
 ラマダンはイスラム教徒にとって、預言者ムハンマドが神(アラー)の啓示を受けた最も神聖な月とされる。10日ごろから始まり、期間中は信徒に課された五つの義務の一つとして、日中は一切の飲食を断つ。異教徒を敵視する過激派組織「イスラム国」(IS)などはかつて、ラマダンに合わせてテロ攻撃を各地で繰り返してきた。
 イスラム圏では、ラマダン中は日没後の豪勢な食事など普段より華やかな雰囲気に彩られるが、パレスチナ人3万人以上が命を落としたガザの交戦が影を落とす。エジプトの首都カイロに住む主婦サミア・サイエドさん(65)は「ガザで友人を亡くし、とても悲しい。今年は街頭でも例年のようなお祝いや飾り付けを見掛けない」と話す。自動車工ムハンマド・アブドラさん(50)も「ガザの子供が飢えているのに、ラマダンを素直に祝えない」と訴えた。
 報道によると、イランの支援を受けるガザの武装組織「イスラム聖戦」は、ラマダンに際してガザやヨルダン川西岸での蜂起を呼び掛けた。また、イエメンやイラク、レバノンの親イラン組織を念頭に「ガザで抵抗する英雄に後れを取るな」と攻撃強化を促した。
 イスラエルのネタニヤフ政権は5日、「イスラエルのあらゆる場所で、全信仰者の礼拝の自由を保護する」と強調し、イスラム教徒との衝突回避へ配慮を見せた。ただ、地元メディアによれば、ガラント国防相はハマスやイラン、レバノンのシーア派組織ヒズボラがラマダンを機に、イスラム教徒の怒りをあおっていると批判。特にヨルダン川西岸のパレスチナ自治区で情勢が悪化すれば「われわれの(ガザでの)戦争の目的を損ないかねない」と危機感を示している。 
〔写真説明〕8日、パレスチナ自治区ガザ北部ガザ市で、イスラム教のラマダン(断食月)に備えて飾りのランタンを選ぶ男性(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)