【ワシントン時事】米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は20日の記者会見で、保有資産の縮小ペースを「かなり早期に」緩める可能性を示唆した。ここ数年はコロナ危機や40年ぶりの高インフレといった難題への対応に追われていたFRBだが、物価の落ち着きを背景に、金融政策の正常化を進める機会をうかがう。
 コロナ禍で打撃を受けた経済を支えるため、FRBは2020年、米国債などの資産購入を通じた量的緩和策を導入し、市場金利の押し下げに努めた。保有資産はコロナ前の倍以上となる9兆ドル(約1350兆円)まで膨張したが、インフレ高進に伴い、22年半ばから資産圧縮に転じた。現在の縮小ペースは月950億ドルで、7兆5000億ドル台に減った。
 保有資産の縮小は「量的引き締め」とも称される。余剰資金を吸収するため、金融引き締めの効果がある。インフレの大幅な鈍化を受け、FRBは利下げ開始の時期を探るとともに、量的引き締めも緩和し、正常な市場環境での「十分な資金準備の水準」(パウエル氏)を見極めていく。
 FRBが十分な水準にこだわるのは、前に資産縮小を進めていた19年9月、資金逼迫(ひっぱく)から短期金利が急上昇して市場が動揺し、緊急資金供給を余儀なくされた苦い記憶があるからだ。パウエル氏は「方針転換しなければならない状況に再び陥りたくない」と話した。
 日銀が世界に先駆けて導入した量的緩和策は、08年のリーマン・ショック以降、利下げ余地がなくなったことでFRBなど主要中央銀行も採用し、コロナ危機でも活用された。「もはや異例の措置ではない」(FRB高官)とされる中、資産規模の正常化に適宜取り組み、次のショックに備える意図もありそうだ。 
〔写真説明〕記者会見する米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長=20日、ワシントン

(ニュース提供元:時事通信社)