2026/05/07
防災・危機管理ニュース
【ニューデリー時事】双方共に核兵器を保有するインドとパキスタンの武力衝突から7日で1年。戦闘は4日間で収束したものの、インドは国際河川インダス川の水資源配分を定めた条約の履行を停止したままだ。水不足の危機に直面するパキスタンは再履行を求めているが、インドは強硬姿勢を崩さず、新たな火種になりかねない。
◇「生命線」
「この地域で農業をするには雨水だけでは足りない。川は私たちの生命線だ」。パキスタン東部パンジャブ州ムルタン近郊で暮らす農家ムハマド・アシュラフさん(52)はインダス川についてそう語った。アシュラフさんは同川の運河から畑に水を引き、綿花や小麦を栽培。パンジャブ州はパキスタン最大の穀倉地帯で、国民約2億4000万人の食料自給を支えている。
昨年4月、両国が領有権を争うカシミール地方のインド側で起きたテロで観光客ら26人が殺害された。インドはパキスタン当局が裏で糸を引いたと断定。「水と血を一緒に流すことはできない」(モディ首相)としてインダス川水利条約の履行停止を宣言し、パキスタンへの攻撃に踏み切った。
条約は世界銀行の仲介で1960年に結ばれた。インダス川本流と西側の支流2本をパキスタンに、東側の支流3本をインドに割り当て、流量データの共有義務などを定めている。
締結後も印パは幾度か戦火を交えたが、条約は維持されてきた。しかし現在、上流に位置するインドが自国の取水量を増やし、パキスタン側の水量を減らす可能性が危惧されている。英王立国際問題研究所(チャタムハウス)はインドの決定が「予測可能性や安定性を損なうだけでなく、水がいかに緊張を高め、紛争の道具として利用され得るかを浮き彫りにしている」と指摘した。
パキスタンは国連でもインドの「違法行為」を訴え、履行を再開するよう要求。対してインドはテロ問題の解決が先だと主張し応じていない。インドの元外交官で作家のアミシュ・トリパティ氏は、パキスタンには数十年間、インダス川水系の80%の水量を譲ってきたが「見返りは戦争とテロ攻撃だけだった」とX(旧ツイッター)に投稿。インドの怒りを代弁した。
◇対米で立場逆転
武力衝突を経て両国の対米関係における立場の逆転も起きた。パキスタンはトランプ米大統領の印パ停戦への貢献を称賛し、ノーベル平和賞候補に推薦。トランプ氏の信頼を得たシャリフ首相ら指導部は、米イランの戦闘終結に向けた仲介役を任された。
一方、米国と良好な関係にあったインドはトランプ氏の仲介を否定。心証を害した形となり、トランプ政権から一時、計50%の高関税をインド産品に課せられた。
〔写真説明〕パキスタン東部パンジャブ州を流れるインダス川の支流チェナブ川の岸辺に座る人々=2025年5月(EPA時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
- タイ北部で河川に変形魚、汚染深刻=ミャンマーの鉱物採掘が原因か
- 対日強硬崩さぬ習政権=広がる影響、関係悪化半年
- インダス川条約停止、続く対立=パキスタンで水不足危機―インドは再履行拒否・武力衝突1年
- 外食「特定技能」受け入れ停止=上限到達、人手不足に拍車
- AI「源内」で答弁作成へ=政府職員18万人、連休明け実証開始
おすすめ記事
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/05/05
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/04/28
-
-
-
サプライチェーン対策「行っていない」が49.7%~BCP策定状況は頭打ち、実効性に課題~
内閣府は、令和7年度における「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」についての結果を発表した。2007年度から隔年で実施しているもので前回の令和5年度時点での調査以来となる。それによると、近年災害時などで課題になっているサプライチェーンの対策について、「サプライチェーン強靭化への取組を行っているか」との設問に対し、「行っていない」が49.7%と最も高く、次いで「行っている」が25.9%、「現在検討中」が20.7%となった。
2026/04/26
-
スマホ通知が号令、災害の初動対応訓練を開発
半導体製造装置大手の株式会社ディスコ(東京都大田区)は、平時のコミュニケーションツールを使ったさまざまな危機事案に対応できる初動対応訓練の仕組みを開発し、実践を続けている。メンバーが、危機を発生させる運営チームと対応チームに分かれ、業務中に突発的に危機事案を模擬的に発生させるとともに、通知を受け取ったチームは、即座に、訓練を開始する。リアリティーを追求した結果、たどり着いた手法だ。
2026/04/20
-
-







※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方