2020/02/12
ロックフェラー財団100RCに見る街づくりのポイント
海面上昇のロードマップ作成
このアクションも、気候変動への対応に関わるアクションの中でフラッグシップ(旗振り役)的位置づけです。ロードマップとは具体的には、最新の気象科学、関連する政策と規制、脆弱性やリスク評価を盛り込んでいます。情報ギャップの解消や協働機会の創出を目指しています。
まずは当該する地域で海面上昇のリスクを共有することを目的として、地域ごとに住民自らが危険エリアのマッピングを行うことなども想定しています。
地域防災計画に基づくアクション設定
オークランドでは2016年から2021年までの減災に向けた戦略として、地域防災計画を策定しました。この計画は、気候変動のリスクを、沿岸部の洪水や森林火災といった不連続な災害と、海面上昇や干ばつといった連続性のある災害に分別しています。このようなリスクに対して最も脆弱性の高いマイノリティコミュニティーや、老朽化したインフラの改築サポートに注力するとしています。
特徴的なのは、市が今後他の戦略や行動計画を策定する際、地域防災計画で定義されたリスクを考慮するよう求めている点です。
100%クリーンで再生可能なエネルギーのインパクト評価
地域コミュニティーやチャリティー団体、NPO、持続可能な都市ネットワークとともに、地域社会で消費するエネルギーが100%再生可能なものになった場合、彼らにどのようなインパクトがもたらされるかを分析しています。再生可能エネルギーは気候変動に対応する未来の資源として有力ですが、その配分がコミュニティーごとで不公平になってはいけない、との考えから、市民を巻き込んだ議論を展開しています。
リスクモデルを通じたコミュニティレジリエンスの強化
前述のものと同様、地域コミュニティーとの協働により、コミュニティー形成プロセスにおける、介入のタイミングを探っています。具体的には、「コミュニティーの成熟度合により、レジリエンスを強化させるためのモデル、ツール、あるいは方法論の導入タイミングが異なる」との仮説に基づき、最適な介入時期を議論するプロジェクトを、チーフレジリエントオフィサーのリードのもと立ち上げるとしています。
概念に基づく大きな戦略の立て方が上手なアメリカ、局所的なきめ細やかさが魅力の日本
日本でも、地域住民が街を歩きながら防災マップを作る取り組みがありますので、オークランドがアクションに掲げる海面上昇のロードマップ作成などは、私たちにもなじみ深い取り組みです。むしろ、日本の防災の取り組みの方がきめ細やかで、定期的な防災訓練を通じた行動準備につながっているといえます。
一方で、オークランド含め諸外国のレジリエント戦略を見ると、概念(この場合はレジリエンス)に基づいた具体的ゴールやアクションの作成、戦略への落とし込みが秀逸だと思います。全体としてどのような方向に向かっているのかが明確で、そのためのロードマップが誰の目にもはっきりしています。局所的には日本の取り組みの方が進んでいるけれども、全体的な戦略の作り方、見せ方については海外事例が参考になります。
オークランドでは、カリフォルニア大学の学生と一緒に、オークランドのレジリエンスに深く関係があると考えられる4つのエリアでフィールド調査を行いました。現地の住民にヒアリングをして、そのエリアの持つ資産や脆弱性を分析しています。住民の生の声を学生さんに拾ってもらうのは良い取り組みですし、日本でも実践されています。学生さんは外部の客観的な目を持っていますので、このような取り組みがもっと広まっていくと良いと思います。
ロックフェラー財団100RCに見る街づくりのポイントの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方