職場における熱中症対策が6月から義務化される。厚生労働省は労働安全衛生規則を改正し、令和7年(2025年)6月1日に施行する。猛暑による労働災害は後を絶たず、厚生労働省によると、全国の職場で熱中症になった人は年間で1195人にのぼり、このうち30人が死亡した。重篤化を防ぐには初期対応の遅れをなくすことが急務と判断した。

改正規則は、WBGT(湿球黒球温度)28度または気温31度以上の環境で連続1時間以上、もしくは1日4時間超作業する場合を対象に、事業者へ二つの措置を義務付ける。第一に、「熱中症の自覚症状がある作業者」「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」がその旨を報告するための体制(連絡先や担当者)を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知すること。第二に、熱中症を生ずるおそれのある作業を行う際に、①作業からの離脱、②身体の冷却、③必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせる、④事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先及び所在地など、熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置に関する内容や実施手順を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知する、こと。

違反した場合、労働安全衛生法22条違反として罰則「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が適用される。企業は暑熱環境の定期測定や暑さ指数掲示、休憩計画の見直し、空調・送風機の増設、経口補水液・氷嚢の備蓄など、ハードとソフトの両面で準備を急ぐ必要がある。

施行に先立ち、厚労省はリーフレットを公開し、「見つける・判断する・対処する」の三段階で現場の具体例を示した。様子がおかしな作業員などを早めに見つけ、医療機関への搬送や緊急隊の要請の判断を行い、救急車が到着するまで作業着を脱がせ水かけ全身を急送冷却する、ことなどを求める。